第11章 スタートライン
楽「なかなか似合ってんじゃん?」
フッ···と笑いながら言う楽に、なんでも似合っちゃってと返しながら隣に立つ。
『でも、こうやって同じの着て並ぶとさ?なんだか撮影でもしてるみたいだよね?』
洗いあげられた食器を重ねながら言えば、その食器を楽が受け取って片付けながら、また笑う。
楽「もしそんな撮影があったなら、俺は店主ってトコか?で、お前は···女将?」
『女将?···ちょっと、そこは可愛い看板娘くらいにならない?』
楽「可愛いとか普通は自分で言わねぇだろ」
『だって他に言ってくれる人いないし』
楽「百さんとか、よくお前に会う度に言ってんじゃないのか?」
『あれは挨拶みたいなものだと思うけど?』
だって会う度に···
マリーだ!今日もカワイイ!だからギューッ!!
···こんなだし。
楽「じゃあ、千さん···とか」
『千?う~ん···千はあんまり私に可愛いなんて言わないよ?どっちかって言ったら、可愛いとかよりも愛してるって言われるけど』
楽「はぁっ?!あ、愛してる?!っ、熱っ!!」
カチャン!と音を鳴らして出汁を掻き混ぜていたレードルを落とし、楽がその手をフルフルと振る。
『大丈夫?!ヤケドとかしたら大変だよ!···ちょっと見せて!』
掴むように楽の手を自分の目線に引き寄せて、その指先を確認すれば早くも赤くなっている。
『早く冷やさないと···』
楽「こんなのほっといても大丈夫だろ。たいした事じゃねぇよ···それよりお前、千さんに毎回···その、そんな事を言われてなんともないのか?」
『あぁ、愛してるとかいうやつ?最初は恥ずかしい照れ照れだったけど、慣れた。いまはまた千がなんか言ってる~くらいで交わしてるよ?なんで?』
楽「いや別に?」
ほら早く冷やして?と水を出しながら、楽の手を水に当てる。
『別にって、凄い動揺してたから···楽も言われたいのかと思っちゃった』
楽「なんで俺が言われる側に決定なんだよ」
『え?じゃあ、千に言いたい側なの?···それはビックリ···楽って、凄くモテモテなのにそっち側だったんだ···』
確かに千は、男女問わずにモテモテかもだけど。
百ちゃんなんてダーリン大好き!とか言ってるし?
楽「んなワケあるか!俺はそっち側じゃねぇよ!」
『そうなの?』
楽「当たり前だ!」