第11章 スタートライン
❁❁❁ 三月side ❁❁❁
万「ごちそうさまでした。三月くんのご飯、ホントに美味しいね」
「そりゃどうも。って言いたいけど、万理さんの方が料理の腕前はオレより上だろ?オレはどっちかっつーと、お菓子専門だし」
調理師免許取ったのも、実家のケーキ屋を継ぐから···とか思ったのもあるし。
その頃はオーディション何度受けてもダメで。
正直もう···少しだけ諦めかけてたったのもあったし。
大「ところで万理さん。愛聖は今日はどこに行ってんだ?」
万「あぁ、それなんだけど···ちょっと急用が出来ちゃって出掛けてるんだよ。社長も知ってる場所だし、帰りは心配いらないって言ってたけど」
「飯は?いらないって言ってたけど、そこはちゃんと飯食えるのか?」
いつも急でごめんなさいって言われたけど、前までは飯の用事が多かったから。
万「多分、大丈夫かな?愛聖がいらないって言ったなら、本人も食べて帰ってくるか、調達するだろうし」
「まぁ、そうだろうけど。もし調達する方だとしたら、1人で飯なんて寂しいだろうなとか、さ」
万「そうだね···俺と知り合う前の愛聖は、時々ひとりで夕飯食べたりしてたみたいだし。俺と知り合ってからは、俺の部屋で一緒に食べたりした事もあったけど」
···え?
子供の頃から愛聖と万理さんは、そういう感じだったのか?!
だから、あんな風に···仲がいいのか。
一「兄さん、どうかしましたか?」
「いや···別に。ただ、万理さんと愛聖って、子供の頃から2人で飯食う関係だったんだなって」
隠すことなく言えば、万理さんは複雑な顔を見せながらオレに視線を移した。
万「みんなも知ってると思うけど、愛聖は物心着く頃には母子家庭でね。俺もそれを聞いたのは愛聖のお母さんからだけど、そのお母さんも愛聖をひとりで留守番させてご飯を···って事に胸を痛めてたんだ」
ナ「小さなレディーが、ひとりで食事をするのは···きっと寂しかったでしょう」
万「だから俺で良ければって名乗りを上げたんだ。ちょうどそういう日に限って、俺のバイトもない時間帯だったし。だから、変な関係ではなくて、その頃はまぁ···妹みたいな感じだったよ」
ナギの言うように、子供がひとりで留守番なんて寂しいだろうし。