第11章 スタートライン
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
「社長、今日の俺の業務は全て完了です。なにかお手伝いする事はありますか?」
紡さんのデスクに座って外を眺めている社長に声を掛けると、クルリとイスごと振り返りにこやかな顔を見せる。
小「ありがとう万理くん。僕の方もさっき終わってるから大丈夫だよ」
「それなら、三月くんに夕飯作り過ぎたからって誘われてるんですが、社長も一緒にどうです?」
愛聖が用事があって夕飯はいらないって言い出したとかで、三月くんから連絡が来たんだよね。
もし良かったら社長も、とか言ってたし。
小「そうなの?···あ、もしかして愛聖さんの好きな物だったりして?」
「そうですねぇ···多分、そうかな?とは思うんですけど。急に予定が変わってしまったから···とかは言ってましたが」
愛聖も最初は寮でみんなと食べる予定だったみたいだけど、また誰かに誘われてるとか?
···千か?
小「う~ん···三月くんのご飯も捨て難いけど···実はこの後、まだもう1件用があるから、せっかくだけど次の機会にしておくよ」
「まだ仕事があるんですか?だったら俺も残ります」
小「大丈夫、ちょっと岡崎くんがここに訪ねてくるだけだから。ほら、あのRe:valeのマネージャーの」
「岡崎さん、ですか···」
俺がまた千と組んでる時、何度もライヴを見に来てくれて、スカウトしてくれて···
俺が離れた後もずっと、千と百くんの事を支えてくれている岡崎さん、か。
···って、岡崎さんがここに?!
「あの···社長?その岡崎さんがどんな用事で?」
もし、もしここで俺が鉢合わせたりしたら···マズくないか?!
小「例のあの事件の時に、愛聖さんがRe:valeの楽屋に忘れ物をしたらしくてね。スタッフがRe:valeの楽屋にあったものだからって、岡崎くんに渡してくれたそうなんだよ」
愛聖の···事件か···
社長の言葉に、あの日の事を思い出して背中を冷たいものが流れていく。
小「僕が直接取りに行くと言ったんだけど、彼が届けに来てくれる事になって···あ、もしかしたらRe:valeも一緒に来ちゃったりして?」
「して?じゃありませんよ社長!···Re:valeの2人が一緒に来たら、俺がここで働いてるのがバレますから」