第11章 スタートライン
❁❁❁ 千side ❁❁❁
コール音だけが鳴り続ける相手に軽い苛立ちを覚えながら、ソファーに寝転がる。
せっかく第一段階として曲が仕上がったものがあるから聞かせてみようと思ったのに。
「まったく···どこにいるんだか」
岡「なにがですか?」
「別に···」
百「オレは分かるよ、ユキが考えてること!ユキはマリーに会いたくて仕方ないんだよね!···ダーリン、浮気?!」
「そうね···」
えぇっー?!ダーリン堂々たる浮気宣言?!とわざとらしく騒ぎ出すモモを横目に、せめてメッセージだけでも入れておくか?とまたスマホを手に取る。
岡「佐伯さんに会いたいなら、一緒に行きますか?」
「どこに?おかりんは愛聖の居場所知ってるの?」
岡「そうじゃないですけど、実は今日、この後に小鳥遊社長さんとお約束をしていまして···Re:valeの今日のスケジュールは終わりましたから僕だけで行こうかと思ってたんですが」
小鳥遊社長とアポ?
百「おかりんはマリーのとこの社長になんの用事なの?」
「それ、僕も知りたい」
僕たちが知らない内にアポを取ってあるだとか、気になるでしょ。
岡「別に仕事の事でお約束しているわけじゃありませんよ?ただ、先日の騒ぎの時Re:valeの楽屋に忘れ物があったそうで、局のスタッフがRe:valeの楽屋にあったものだからと今日渡されたんです」
「忘れ物って?」
岡「これですよ、ほら」
言いながらおかりんがカバンから袋を取り出して中身を見せてくれる。
岡「女性用のハンカチと、それからピアスですね。僕も佐伯さんがこのピアスをしているのを見た事がありましたし、Re:valeの楽屋にあったなら間違いなく佐伯さんの物だと思いましたので預かったんです。それで、先方に連絡を入れたらウチの事務所に取りに来るって言われたんですけど、それもお手間かと思ったんでこちらから出向く事に」
小鳥遊プロダクションに届け物、か···
それならそこで愛聖に楽譜を見せればいいし。
聞きたいってなら、愛聖の部屋にお邪魔させて貰えるなら···どんな場所に住まいを置いてるのか分かるし···
「おかりん、僕たちも行く」
おかりんにそう告げて、モモを促しながら身支度を始めた。