第11章 スタートライン
楽「愛聖、お前が少なくとも俺より小柄で線が細いのは認めてやる」
···楽と比べたら、大概の女性は小柄で線が細いよ!
楽「けどな?さすがに電柱よりは細くないんじゃないか?···隠れてるつもりだったんだろうが、丸見えだ。だから刑事には向かねぇな」
『う、うそ?!見えてた?!』
楽「見えてた見えてた。そのヒラヒラした服もなにもかも、な」
カーッと顔が熱くなるのを自覚して、手のひらで扇いで熱を飛ばす。
ぜったい大丈夫だと思ってたのに、ましか丸見えだったなんて!
···恥ずかしい。
楽「ま、アレだ。そんな天然素材丸出しな所も、お前だよな」
肩を揺らしながらまだ笑い続ける楽に、もう!と一喝して手荷物を持ち直しながら息を吐く。
『あ、そうだった!楽、これ···』
クリーニング店の袋を少し開いて、その中にあるジャケットを楽にチラ見せする。
楽「あぁ···あん時の、か」
『ちゃんとクリーニングしてあるから、着ようと思えばすぐに着られるから。それから、いろいろとその···ありがとう』
顔を上げて、ちゃんと楽の目を見て···やっとありがとうを伝えることが出来た。
『それから、ゴメン』
楽「なにが?」
『あの日、せっかく楽がプレゼントしてくれた洋服が、あんな事になって、かな?』
諸事情であの服は証拠として提出してしまったから手元にない事と、楽が時間を割いて用意してくれた物だという事に対しての後ろめたさから、視線が俯きがちになる。
楽「そんなの、お前のせいじゃない。だから気にすんな」
ぽふっと頭に手を置かれ視線を戻せば、いつになく穏やかな顔を見せる楽がいて。
『楽ってホントは、イイ男だったんだね』
龍がよく言ってる事を思い出しながら言えば、楽がフッと笑いを零す。
楽「今頃気付いたのかよ」
『今頃、気付いちゃいましたよ?』
釣られるように笑えば、気付くの遅せぇよ···とまた楽が笑った。
『これからお店の手伝いがあるんだよね?ごめんね、時間取らせちゃって。じゃ、これ···クリーニング出しちゃったから、楽のいい匂いは消えちゃったけど』
楽「俺のって?」
『だから、楽ってフワッといい香りがするから···あっ···』
しまった、と口を押さえても既にバッチリ聞かれていて。
楽「お前···そんなに俺の匂い嗅いでんのか?」