第11章 スタートライン
楽「だから!そんなんじゃねぇって!」
はいはい、と軽く返事をして、この話はもう終わりね?と冷やかな微笑みを向けた。
「龍。龍の手料理、久し振りに食べたいから···夕飯はボクが付き合うよ。ただし、アルコールは程々にね?今日はボクだけしか、いないんだから」
龍「アハハ···そうだね。じゃあ、今夜は天の為に沖縄料理を振る舞うよ」
龍が酔ってどうにもならなくなったら、ボクひとりじゃ大変だから。
「そうと決まれば、行こうか?買い物しながら龍の家に行くでしょ?荷物持ちくらいボクでも出来るから」
言いながら簡単に身支度をして、その場を後にした。
廊下を歩きながら、ふと、ひとつ思い出す。
「クギ刺しておかないと、危ないかもね」
龍「え、なに?」
「なんでもない」
カバンからスマホを出して、いま必要なアドレスを辿る。
ー 楽と会うんでしょ?お腹を空かせたオオカミにはご用心 ー
たったひと言だけのメッセージを打ち込み、ラビチャを送る。
すぐに愛聖から返信が来て、そこに書いてあるメッセージに目尻を下げた。
ー 用事があって楽には会うけど···もしかして楽、お腹空いてるの?それなら食事も付き合った方がいいのかな? ー
ホント···天然なんだから、さ。
いつか誰かにパクリと食べられても知らないから。
龍「天?なんか楽しそうだけど、どうかしたの?」
「ボクの周りには天然素材がたくさんいるなって、そう思ってただけ」
龍「天然素材?天の知り合いには宝石商でもいるのか?」
ほら、ここにもひとり。
「どうだろうね?そんなのがいたら、今頃ボクは宝石に塗れてキラキラしてるだろうけど」
含み笑いを浮かべながらスマホをカバンにいれて、早く行こうか?と龍を促した。