第11章 スタートライン
ナ「マリー?ぜひ、ワタシを選んで下さい?」
パチン!と大げさにウインクを投げて、六弥さんが一歩前に出る。
三「ナギはダメだ。なんか危ねぇ匂いがプンプンする。ほら一織、お前がやらないならオレが代わりにやるから」
···兄さんだったら手先が器用ですし、安心出来るかと思い、ハサミを手渡そうと体向ける。
環「いおりん、俺がやる」
陸「だから、オレがやるってば」
大「そこは年の順でお兄さんだろ?」
ナ「イオリ?分かっていますね?」
次々に私へ向けて伸びてくる腕を軽く払いながら、ハサミを後ろへ隠す。
「なんですかその手は!佐伯さんは私にと言っているんですよ?!だから私が切りますから!」
「「 どーぞどーぞ! 」」
は、ぁっ?!?!
やられた···
沖縄から戻って早々のいろいろな出来事で···忘れてました。
あのメンバーが宿泊先のホテルで、そんな遊びをして盛り上がっていたことを···
壮「一織くん···僕が途中で止めに入れば良かったんだけど···」
申し訳なさそうな顔をした逢坂さんが、ゴメンねと言いながら私の肩にそっと手を置く。
「いえ···大丈夫です」
ナ「イオリ、武士に二ゴンはありませんね?」
六弥さん···あなたはなぜ、そんなにキラキラとした目で私を見るんですか。
大「だよなぁ?なんたって、パーフェクト高校生だしな?」
二階堂さん、ニヤニヤしてるのがあからさま過ぎて軽く腹が立ちますよ。
陸「そうそう!パーフェクト高校生!」
環「おー、いおりん、頑張れ」
···。
「う、うるさい人たちですね!四葉さんだって私と同じ高校生でしょう!それから六弥さん、私は武士ではありませんが···有言実行はさせて貰います」
これでもかという位に大きく息を吐き出して、私たちのやり取りをニコニコしながら見ていた佐伯さんの前に椅子を置いて座る。
「念の為に言っておきますが、ノークレームですよ?」
『一織さんのこと信じてますから、大丈夫です』
「いきなりハードル上げるのやめて貰えますか」
そっと前髪を指先で掬いながら、毛先にハサミを添える。
その髪の隙間から、私をまっすぐに見る佐伯さんの瞳があって···
「佐伯さん、ひとついいですか?」
『はい、なんですか?』