第11章 スタートライン
『なんかスッキリしない感じ。怒ったりしないからちゃんと言ってよ?』
う~ん···と口元を押さえながら目を逸らす万理に言えば、絶対怒るから言わない!と笑う。
『怒らないってば!だからさ、ね?教えて?』
万「そこまで聞きたいなら···言うけど。俺がさっき思ったのは、みんなから少しずつハサミ入れるとか···お相撲さんの引退みたいだな、って」
お、お相撲さん?
言われたことをぽわんと想像させて、ピクリと眉が動く。
『ひどい万理!そんなこと考えるとかサイテー!』
万「お、怒らないって言ってなかった?!」
『それは怒るに決まってる!だってお相撲さんだよ?!私そんなに体大きくないし!もうちょっとくらい可愛いはず!』
文句を言いながらちゃっかりお相撲さんよりは可愛いはずだと拗ねれば、万理はゲラゲラと笑いだした。
万「愛聖が可愛いのは、ずっと前から知ってるよ。だから心配するなって」
いつものように私の頭をぽんぽんっとして、そろそろみんなの所に戻る?なんて、言った時。
三「あれで恋人同士じゃないってんだから、世の中分かんねぇよなぁ」
一「そうですね。いろいろなカタチはあるかと思いますが、端から見れば···ですよ」
大「だな。砂糖にハチミツかけたみたいに甘い時間を過ごしちゃってまぁ···お兄さんドキドキしちゃう」
···あれ?
環「バンちゃんとマリー、本当はボスに内緒で付き合ってるとかじゃねぇの?」
壮「環くん···そういう事は社長の前で言ったらダメだと思うけど···」
陸「壮五さんの言う通りだよ環!」
ナ「マリー···ワタシという者がありながら···」
小「アハハ···多分、ナギくんだけのじゃないと思うけど」
環「じゃあ、誰の?」
壮「そういう問題でもないと思うけどな···」
ドアの隙間から、縦並びに半分の顔が8つ···
万「あちゃー···これは俺がいろいろ大ヤケドな感じ?」
ポソッと呟いた万理の頭を、今度は私がぽんぽんっとしてあげる。
『ご愁傷さま、万理。大ヤケドついでに、いつものお返し!』
スキあり!と頬に口付けて、パッと体を離す。
当然、ドアの向こうからは大きな叫びや悲鳴が上がり···
小「万理く~ん?ちょっと僕とお話しようか?」
貼り付けた笑顔の社長が誰より先に部屋に入ってきた。