第11章 スタートライン
万「そう、愛聖の母さん。それで、万理くんお帰りなさい、お赤飯炊いたから一緒にどう?って」
お赤飯···なんで?
万「俺も時期的にお赤飯だとか、一瞬なんのお祝いだろうかと首を傾げたけど···そしたら愛聖の母さんが、」
そこまで言いかけてやめる万理を不思議に思っていて、少し考えてみる。
お赤···。
私が子供の頃に······。
『あーっ!!!いい!その続きは言わなくていいから!』
か、母さんってばなんで万理にそんなことまで話してんの?!
いくらお隣同士でいろいろ仲良くてオープンだとしても、それは言っちゃダメなやつでしょ!!
しかも万理に!!
母さん、何考えてたんだろう?!
恥ずかし過ぎて···
『穴があったら入りたい···っていうか、自分で深く掘って入り込みたい···』
万「穴掘り手伝う?」
さっきまで真剣な話をしてくれてたのに、急に万理は笑い出して、俺そういう作業得意だよ?とまで言い出す。
『あぁもう···ホンットに···でも、万理。ありがとう』
万「なにが?」
そういうところだよ、と言いかけて、小さく笑って言うのをやめる。
万理は万理らしく、私が欲しい言葉をくれる。
それは計算された言葉ではなくて。
ー ずっと側にいたけど? ー
それは物理的に隣にいたんではなくて。
万理は私が仕事してるのを、ずっと応援してたってのもあって。
そんなひと言だけど、それが今はなにより背中を押してくれる気がするから。
ひとしきり笑って、気持ちも明るくなれて。
私はひとつの提案を万理に聞いてみることにした。
『あのね万理。みんなの顔を見て、ちょっと考えた事があるんだけど』
万「みんなの?それってどんな?」
深く被っていた帽子を剥ぎ取り、マスクも外し、正面から万理に堂々とその姿を見せる。
『この髪も顔も、みんなに見られたし···それでって言うのも変なんだけど。この後どのみち髪はどうにかしなきゃじゃない?』
万「まぁ···そう、だね」
『でね?この際せっかくだから、最初はみんなに少しずつハサミを入れて貰おうかなぁ?とか』
スウッと髪を指で梳きながら、どう?なんて笑いかける。
万「俺は、愛聖がそうしたいならいいと思うよ?ただ···あれだ、うん···まぁ、いっか」