第11章 スタートライン
万理に連れられて、とりあえずで社長室へと入る。
万「ほら、ここに座って」
促されるままにソファーに座って、室内をぴょんぴょん走り回るきなこちゃんを眺めた。
万理がここに連れて来たのは、きなこちゃんもいたから、それもあったのかも知れない。
あの殺伐とした場所にきなこちゃんが走り回って、ケガでもしたら大変だし。
ケガ、か···
みんなに···見られ、ちゃったな。
最も、みんなと同じ場所で生活してるんだから、遅かれ早かれな感じはあるけど。
だけど。
もし···できるなら。
もう少し色が抜けた状態だったら、まだマシだったのかも知れないな。
私の顔を見た時の、あの···みんなの顔を思い出してギュッと胸が痛くなる。
誰だってこんなもの見たら、イヤな気分になっちゃうだろうから。
マスクの上から頬に触れて、今朝、鏡を見た時の自分の動揺を思い返す。
予想はしてたけど、やっぱりショックだったし。
万「痛い?だったら、なにか冷やす物を持ってくるよ」
頬を押さえたまま動かずにいた私を見て、万理が顔を覗く。
『違くて···あ、そうじゃなくて、痛いのは痛いけど、今はこっちの方が上かな』
ポンッと胸を押さえて力なく笑えば、万理が私の前に膝を着いて目線を合わせて来た。
万「社長から連絡を受けた時、俺は···心臓が止まるかと思った。仕事に行く時、今日はRe:valeの番組に呼ばれてるんだって、あんなに元気よく出て行って。なのに、まさかそんな大変な事が続けて起きているなんて思ってもなかったから」
『でも、万理のせいじゃないから。誰かに恨まれてるっぽい私が悪いんだし』
天に散々話をされて、簡単に他人を信用するなって忠告もされて。
千にも、いろいろ言われてたし。
だけど、それを聞かずに過ごしてた私が···悪いんだから。
万「社長からの電話を切った後、なんで千が側にいるのにとか、百くんだっているのに、とか···聞かされた内容がショッキング過ぎて、怒りの矛先がおかしな方に向いたりもしたよ。それから冷静になって、千や百くんに心の中で謝ったけど」
ハハッ···と乾いた笑いを漏らしながら、万理が続けた。
万「その後、もし···俺がその場にいたら、とか。そんな事も、考えたりして···今日の仕事に同行したのが社長じゃなくて俺だったら、何が出来たんだろうとか」