第11章 スタートライン
誰もが聞きたくて、だけど言い出せない事を環がサラっと社長に問いかければ、社長はゆっくりと目を伏せて黙り込んでしまう。
環「あんなマリー見ちゃったのに、言えないのかよ!」
壮「環くん!···社長に対してそんな言い方はダメだよ!」
暴走しそうな環を壮五さんが止めに入る。
一「社長。私たちはみんな、佐伯さんと生活の場を共にしている人間です。もし、どうしても話せないと言うなら仕方ありませんが、そうじゃないなら···」
大「···だな。少なくともアレは、愛聖が自分でどうにかなって負ったもんじゃないだろうな」
大和さんがそう言った後、社長がゆっくりと目を開けてオレたちに小さく頷いた。
小「そうだね···一織くんや大和くんが言うように、愛聖さんはキミたちみんなと一緒に生活をしている仲間だ。話すよ、彼女になにが起きたのか」
深刻な表情の社長に、今度はオレたちが黙り込む。
小「ただ、ここは人が多過ぎる。僕の部屋に行こうか」
オレたちは社長の後について移動した。
小「これから僕が話すことはとてもショッキングなことだけど、それでも聞くかい?」
環「当たり前じゃん、そんなの。だからボスに着いてきたんだし」
壮「環くん!」
環「だって気になんじゃん!いつもだったらニコニコして俺たちにお帰り!って言ってくれるマリーが、あんな···急に泣き出したりとか、変じゃん!」
「環の言う通りです、壮五さん。オレも、いつもいろいろ助けて貰ってるし、もしオレがなにか愛聖さんにしてあげられる事があるなら···そうしたい」
ナ「ワタシもリクと同じ気持ちです。マリーの悲しい顔、見たくありまセン」
小「分かった。じゃあ、話すよ」
そう言って少し考えながら社長に聞かされた話は、そこにいる誰もが···言葉を失うほどの内容で。
それがどんなに辛くて、苦しい事なのか···そう考えると、心が張り裂けそうな···そんな内容だった。