第3章 新しい環境
❁❁❁ 一織side ❁❁❁
午後の授業が終わり、四葉さんと帰り支度をしていると兄さんからラビチャが入った。
〝 愛聖がオレ達と同じ寮に住む事になって、いま荷物運んで準備してる。一織も環も帰って来たら手伝ってやってくれ。ちなみに愛聖の使う部屋は大和さんの向かい側だ 〟
なるほど。
二階堂さんの向かい側だと言う事は、私の部屋からは少し離れている、という事ですね。
それは別に構わないハズなのに。
なぜ今、少し残念に思ったのでしょうか。
環「いおりん、帰んねぇの?」
「兄さんからラビチャが来てたので見てたんです。佐伯さんが私達と同じ寮に入るそうですよ」
環「マジか?!おぉっ、いおりん早く帰ろうぜ!」
私は四葉さんが支度終えるのを待っていたんですけどね。
ウキウキし始める四葉さんにため息をひとつ吐き、肩を並べて歩き出した。
環「マリーが俺達と一緒に住むとか楽しいな」
「そうですか?」
環「いおりんは、マリーが一緒に住むのイヤなのか?」
「そうではありません。ただ、心配事が増えるな、と」
ただでさえあの寮には、女性がいませんから。
社長の考えであれば私達は従うべき立場にありますが、男性だけの中に女性をひとり住まわせるというのはキッチリとした規律を決めなければ。
二階堂さんも意外と、その、アバウトなところがありますから。
環「なぁ···いおりん。ちょっとだけコンビニ寄ってもいい?王様プリン買いたい」
「四葉さん···毎回言いますけど、寄り道はダメです。さっきも言ったでしょう、早く帰って佐伯さんのお手伝いをしなければいけないんです。それに、王様プリンなら昨日も買ったでしょう」
環「昨日買ったのは···もう食った。いま買いたいのはマリーのおみやげ。片付けすっと疲れっから、王様プリンあげる」
······。
「それなら仕方ありませんね、お付き合いします」
別に、四葉さんがお土産を···と聞いたから同行する訳じゃない。
この間レッスン場でみんなと話した時にあの人が垣間見せた笑顔を、もう一度···見たいと思ったからで。
ふわりと笑った顔が···かわいい人でした、から。
「置いていきますよ?」
浮き足立つのを隠すように、自動ドアを潜った。