第11章 スタートライン
楽「言うワケ!···あぁもう···ったく···なんなんだよ」
ガシガシと頭を掻きながら、楽くんが大きく息を吐く。
天「言ってあげたら、楽?大先輩のお願いだよ?」
楽「っせぇよ!」
周りのメンバーが楽くんで遊び始めたのを見て愛聖も小さく笑った。
『楽?助けに来てくれてありがとう。それからみんなも···ジャケット、ちゃんとキレイにして返すね?』
楽くんが掛けたジャケットを合わせて閉じながら言えば、楽くんは愛聖をもう一度抱きしめて···貸し···だからな?と微笑んだ。
姉「さ、アンタたち急ぎなさい?じゃないと社長の大目玉喰らうわよ?」
龍「あ、ははっ···それは···嫌かも」
苦笑いを浮かべる龍之介くんに、イヤなら早くしなさい!と喝が入る。
「この後のことは僕たちが引き受けるよ。もちろん、小鳥遊社長を先頭に、ね?」
楽「···あぁ」
百「そうそう!な、マリー!」
ちょっと目を離した隙にモモが愛聖を抱きしめるも、すぐに微妙な顔をしてモモがその腕を解いた。
百「···マリー」
モモらしくない寂しげな顔で言えば、愛聖はそれを見てハッとする。
『ち、違うの百ちゃん···いまは、ちょっと···』
普段なら、どんなにモモがじゃれても平気だろうけど、さすがにこの状況下では気持ちがついて行かないんだろう。
時が経てば···いや、時が経てばどうにかなるものでもないのか。
心も体も傷ついている愛聖を見ながら、行き場のない気持ちに、人知れずグッと手を握る自分がいた。
姉「行きながら上層部に声を掛けておくわ。それまでアンタたちでしっかりとこの子の側にいてあげなさい」
小「お願いするよ。後日ちゃんと挨拶に伺うから」
長い髪をヒラリと揺らし、メンバーを後押ししてTRIGGERのマネージャーが部屋を後にする。
バタバタとした足音が遠ざかり、やがて僕たちは静寂に包まれた。