第11章 スタートライン
❁❁❁ 千side ❁❁❁
姉「約束は約束。アタシだってもちろん心配よ?けどね、アンタたちには許される時間はもうないの」
楽「···せめて、部屋まで」
姉「ダメよ。少しずつを許容したらキリがないわ」
ふたりのやり取りを聞きながら、ずっと愛聖を抱きしめたままの楽くんの肩に手を置いた。
「僕が···ここから先は僕が愛聖を預かるから。TRIGGERとしての仕事があるんだろ?」
楽「けど···愛聖は···」
力なく凭れる愛聖に、楽くんが顔を埋める。
「愛聖だって、きっと仕事に行けと言うよ。心配なのはここにいるみんな同じ。だから、なにかあったら必ず君たちに連絡をすることを約束するから···モモが」
百「オレかーい!って、ノリツッコミしてる場合じゃない!楽、もしオレたちがTRIGGERと同じ立場なら、きっと同じように仕事に行くことに抵抗しておかりんを困らせるかも知れない。だからさ、ここはユキが言うようにTRIGGERはTRIGGERの仕事に向かって?」
小「そうだね。連絡をすることに関しては僕も約束しよう。仕事中だと困るから、姉鷺さんでも···や、八乙女でも···連絡はしよう」
楽「···親父に?」
なぜそこで八乙女社長の名前が出たのかは分からなかったけど、でも、小鳥遊社長の言葉に楽くんは渋々といった具合いに納得をしてくれた。
小「まずは救急車を···」
そう言いかけた社長の言葉に、愛聖がピクリと反応する。
『社長···救急車はいらない、です』
小「そうは言っても念の為にいろいろ診て貰う方が」
『いえ、大丈夫です。叩かれた場所は時間が経てば治ります。それに、危うかったけど···ちゃんとお嫁に行ける体のままですから』
危うかった?
いや、既にいろいろアウトだろ。
『楽···ありがとう。もう、大丈夫だから』
やっとの感じで腕で愛聖が楽くんの胸を押し返し、弱々しい笑みを見せる。
楽「こんな時にムリして笑うんじゃねぇよ···バカ···」
あ···いまの感じ···なんだか···
百「やべ···いまオレ、楽のバカってトコにキュンとした···」
実は···僕も。
楽「はっ?!」
百「ねぇ、いまのヤツさ、オレにも言ってみてよ?···バカ···って」