第11章 スタートライン
❁❁❁ 天side ❁❁❁
小鳥遊プロダクションの社長の後に続いて、ボクたちは通路を走り抜ける。
この先の階段を降りれば目的の階となる。
それは次第に人影が疎らになることで、特定の人間しか使わない階だと言うことが証明されていた。
百「ユキ、生きてる?」
千「···生きてる。さすがにこれくらいじゃ死なないから」
軽く息を切らせたパートナーに声をかけるのを見て、ボクも言葉に出さずに自分の仲間の顔をチラリと見た。
楽も龍も···なんともなさそうだ。
ま、当然と言えば当然だけど。
これくらいで疲れてたら、TRIGGERの曲に合わせたダンスなんて踊り切れないから。
姉「ホントにこんな場所にいるのかしら?随分と静かだけど」
楽「さぁな。でも、龍が見掛けた通路の先はここへしか続いていないんだろ?」
姉「そうだけど···それにしても、静かすぎじゃないかしら?」
もしかしたら既にここから連れ去られてしまっているんじゃ···という疑念が湧き上がった時、どこからともなく咽び泣くような声が聞こえた。
「静かに·········ちょっとみんな止まって」
ボクが言えば、周りのみんなが足を止め耳を澄ます。
「この階のどこかから聞こえてる。微かにだけど、泣いてるような···そんな感じの」
千「これは···もしかして···」
百「もしかしなくてもきっとマリーだよ!」
小「違うと言い切れない現状だね。よし···片っ端から開けていこう」
いくつもあるドアをひとつずつ用心して開けて見るも、その部屋の中に愛聖の姿は見つからない。
小「残すところはこの部屋だけだね···あれ···?鍵が掛かってる」
ガチャガチャとノブを動かす姿を見て、楽もそこに加わり···
楽「愛聖!そこにいるのか?!いるなら返事しろ!」
ドアを叩きながら楽が叫ぶ。
楽「おい!愛聖!!」
何度も楽が呼び掛けていくうちに、ひと声だけ小さな声が部屋の中からボク達の所へと届いた。
『楽···?』
百「マリーの声だ!···マリー!いま助けるから!」
「ボクに任せて。こういうの···こっちに来る前に護身術のひとつとして習ったから」
騒ぎ出すみんなを押し退けて、ポケットから1本のピンを取り出し鍵穴へと差し込んだ。