• テキストサイズ

〖 IDOLiSH7 〗 なないろパレット

第11章 スタートライン


「オイ!いくらなんでも女の顔を殴るとか!」

「っせぇな!クソッ···仕方ねぇ、これで終わりにしてやる」

「待てって!さすがにそれはヤバすぎだろ!」

「お前は黙ってろよ!これもアイツに言われた事なんだよ!」

口端から流れる物を手の甲で拭いながら顔を上げれば、目の前に突き出されるキラリと光る物に息を飲む。

私の人生···ここで終わるの···?

まだ、やりたい事がたくさんあるのに···

そう思いながらも、動けずにいる自分が悲しくて。

髪を鷲掴むように引っ張られても、ただ···瞬きを繰り返すしか出来なかった。

「もうちょい遊べると思ったのに、つまんねぇヤツ···」

ザリッと音がして、ハラハラと床に散る···髪。

その中から無造作に一掴みをビニールに入れる様子をぼんやりと眺めながら、視界が滲むのを隠せなかった。

百ちゃんがツヤツヤだと褒めてくれた事もあった。

千とどっちがサラサラか?って、比べっこしたり。

ケガした時はみんなが乾かしてくれたり。

龍がもの凄く照れながらも、キレイだって褒めてくれて。

万理と再会した時だって、随分と伸ばしたねって笑って。

今日だって姉鷺さんが···結い上げてくれて···

そんないくつもの思い出が次々と浮かんでは消えていった。

なのに、こんな無造作に···

小刻みに震える手で髪に触れてみれば、それまであった場所に髪はなく。

長く長く伸ばし続けていた髪が、部分的に半分程の長さで途切れていた。

「足音が聞こえないか?誰か来るんじゃ···」

「チッ···行くぞ。向こうの扉を開ければ非常口に繋がってる···その前に、だ」

グイッと腕を引かれ、近くにある資材へとその場にあったロープで縛り付けられる。

『っ···』

ギリギリと締められる手首に痛みが走り、顔をゆがませた。

「これで少しは時間が稼げる···行くぞ」

慌ただしく去っていくふたつの影を遠目に見て、やっとこの恐怖から逃れられるんだと俯いた。

怖さと、悲しさと。

そんないろんな気持ちが入り交じり、ほろほろと涙が零れ落ちる。

口端から滲んだ血に涙が混ざり、重力に逆らえずにゆっくりと肌を辿っていく。

拭おうにも両手を縛られているせいでそれも出来ず、それは顎を伝って···ポタリ、と胸元に落ちて行った。


















/ 1348ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp