第11章 スタートライン
楽 ー すぐ行く!だから居場所を教えろ ー
助けて···ただそれだけを言って、不機嫌な声の主はすぐにそれに答えをくれる。
『ここは、』
地下の···そう言いかけて迫る人影にハッと息を飲んだ。
「てめぇコソコソとなにしてやがる!」
あっという間にスマホは取り上げられ、通話を切られてしまった。
「ふざけた事をしやがって···来い、泣く暇もなく遊んでやる」
『いや···離して!』
伸びてくる手を払うように逃げても、それも叶わずに肌に食い込む勢いで腕を捕まれ···そのまま引き倒された。
無機質な床に打ち付けられた体はすぐには言うことを聞かず、ほんの一瞬の隙が出来たところを、遂には床に押さえ込まれる形で逃げ場を失ってしまう。
見知らぬ男の向こう側に見える、無機質な天井。
誰も助けには来ないだろう、この現状。
そんな現実に、怖さと孤独が押し寄せて言葉が···出なくなる。
「ハハッ、さっきまでの威勢はどうしたよ?ま、最初からそうしてりゃ手間は省けたってのに」
押し倒されてまたも肌蹴た素肌をスルリと撫で上げられ、ゾクリと肌を震わせる。
『や···やめて···』
漸く出た言葉は陳腐なもので、嘲笑を受けた。
「拒否権ないって、ま~だ気付かねぇの?」
一度撫で上げた指先を離し、今度はウエストから下に向けて同じ動作を繰り返す。
その手はやがて裂かれた生地の隙間から入り込んで来る。
「なぁ、さっきの電話の奴が探しに来たらヤバいぞ。もうここら辺で逃げようぜ」
もうひとりの男がドアをチラチラと気にしながら言えば、私を押さえ込んでいる人間も···確かにな、と返す。
助かった···そんな甘い考えが浮上した瞬間。
「けどな、据え膳食わぬはなんとやら?ってな」
そう言って、辛うじて繋がっていた衣服が引きちぎられた。
『ぃ、いやぁぁぁぁっ!!』
ありったけの力を振り絞り抵抗すれば、それを押さえ込もうとする相手と揉み合いになり···無我夢中で振りかざした私の手が相手を叩いてしまった。
「ってぇ···こ、の···!」
一瞬の隙が出来て離れようと目を逸らした私の頬に激痛が走り、その勢いでクラリとする。
心持ちが出来ていなかったせいで、舌に広がる不快な味で口の中が切れたのだと自覚する。
痛む箇所を押さえながら、ギュッと目を閉じた。