第11章 スタートライン
みんなが様子を伺うのを察してか、楽くんがスピーカーをオープンにする。
コール音が、1回···2回···3回···となり続き、やはり出ないかと息を吐き出しかけた時、その音が途切れた。
楽「···出た!おい愛聖!お前いまどこにい、」
ー お願い···助けて! ー
百「助けて、って···」
思わず口を開くモモに目配せをして黙らせる。
楽「すぐ行く!だから居場所を教えろ」
ー ここは、 ー
ー てめぇコソコソとなにしてやがる! ー
ー やめて!来ないで!!···離して! ー
乱暴な男の声と愛聖の叫びで、緊迫した空気が漂う。
じゃあ···やっぱり!
···そう確信した瞬間に、大きな音を最後にして通話が途切れる。
楽「···切れた。いや、切られたってのが正解なのか···?」
百「行こう!カオルちゃんなら、局内のアチコチに詳しいよね?!」
姉「ちょっと?!引っ張らないでよ!」
TRIGGERのマネージャーの袖を引くモモの手に、小鳥遊社長が自分の手を重ねて止める。
小「状況は最悪かも知れない。幸いここの局内なら僕も昔から通ってるから···僕が先陣を切ろう」
普段は穏やかにしている表情をキリッと変えて僕たちに言う。
楽「俺も行く!愛聖は俺に···助けろって言ったんだ」
姉「ちょっと楽!アンタはこの後のスケジュールのこと忘れてるの?!」
天「ボクも行くよ」
龍「もちろんオレも行く。何かあった時のために人数は多い方がいい」
次々と同行に賛同するメンバーに、TRIGGERのマネージャーが仕方ないと言わんばかりに息を吐く。
姉「全くアンタたちと来たら···事が済んだら死ぬ気で急ぐ!それが条件よ。とにかく愛聖を探し出しましょう」
百「社長さん急ごう!」
モモの声に大きく頷き、社長さんが通路を走り出す。
その背中に続いて、僕たちも走り出した。