第11章 スタートライン
❁❁❁ 千side ❁❁❁
「モモ!その辺にいる顔見知りのスタッフに手当り次第、愛聖を見掛けなかったか聞いて」
焦る気持ちを隠すことなく、モモにそんな言葉を投げる。
僕よりも···こういう時は顔の広いモモの方が情報収集には強い。
なぜあの時···無理にでも愛聖を引き止めなかったんだ。
なぜあの時···僕は聞き分けを良くしてしまったんだ。
そんな後悔の念が次々と押し寄せてくる。
バタバタと通路を駆け抜け、どこへ向かえばいいのかと迷いながらも角を曲がれば、同じように角を曲がって来た大きな人影に当たってしまう。
「っ···すみません、急いでたもので」
姉「こちらこそ···って、あら···Re:valeの···」
楽「千さん···?」
派手な服装から顔を向ければ、僕がぶつかったのはTRIGGERのマネージャーだったのか···
天「マネージャー、惚けてる場合じゃないんじゃない?ボクたちの大先輩にもあたるRe:valeのメンバーに体当たりとか···ケガでもさせてたら困るでしょ?」
姉「あら、失礼ね天!アタシはそこまでゴツゴツしてないわよ···それより、天下のRe:valeが廊下を走るなんて、アタシはそっちの方がびっくりよ」
「急ぎの用があって···そうだ!愛聖をどこかで見なかったか?!探してるんだよ」
同じ局内で、ましてや僕たちの収録前に顔を合わせていた彼なら、なにか知っているかも知れないと、僅かな希望をかけて聞いてしまう。
姉「そう言えばさっき、龍之介がどこかへ行くのを見掛けたとか言ってなかったかしら?」
龍「え?あ、あぁ···確かに見たよ。どこへ向かっているのかは分からないけど、でも、あの先は確か大道具置き場とか、資材置き場···あぁそうだ、マネージャーがそれと空き部屋位しかないとも言ってたけど···」
そんな人気のないような場所に···
天「楽···さすが愛聖の事となると行動早いね」
楽「うるせぇよ」
強ばる顔を直せないまま彼らを見れば、楽くんがポケットからスマホを出してアドレスを辿っている。
百「さっき社長さんもかけたけど、その時はコール音だけで出なかったんだよね」
「そうね···」
出なかったのか···出れなかったのかは分からないけど。