第11章 スタートライン
❁❁❁ 百side ❁❁❁
「あ~あ···どうせ帰り支度するだけなんだから、ここでいいじゃんね?」
マリーがいなくなった楽屋のソファーに転がりながらブツブツと独り言のように言ってみる。
千「···そうね。でも今日は社長さんが一緒にいるんだから無理に引き止められないでしょ」
「えぇー···」
いつもなら社長さんがいてもベタベタしたり、僕に任せて?とか言っちゃったりするのに、今日に限ってユキは聞き分けがいいんだよ。
はぁ···とため息をひとつ吐き出してソファーから起き上がれば、ちょうどのタイミングでドアの外からおかりんとマリーの社長の話し声が聞こえてドアが開けられた。
岡「さ、小鳥遊さん中へどうぞ」
小「すみません、お邪魔します···あれ?愛聖さんは···手洗い、かな?」
おかりんに促されて楽屋へと入った来た社長さんが軽く中を見回して、そこにマリーの姿がないことに首を傾げた。
「マリーならさっきスタッフが迎えに来て、新しい楽屋を用意したから案内するとか言われて出てったけど?」
小「新しい楽屋にスタッフ?···その話はなしになったんだけど?」
岡「ですよね?後は帰るだけだと伺ってましたから、それならRe:valeの楽屋をそのまま一緒に使うっていう話で纏まって今に至る訳ですから」
千「おかりん、それ···本当?」
岡「もちろんですよ。いろいろな事情は小鳥遊さんから伺いましたし、それなら人が多い部屋にいる方がと思ったんでこちらから申し出たんですから」
エッヘン!とあからさまに胸を張るおかりんを見ながら、オレはユキと顔を合わせた。
千「モモ···さっきのスタッフって、どんなヤツだったっけ?」
「オレもいま同じこと考えてる。ここへマリーを迎えに来るって事は番組の関係者だよね?でも···あんな感じのスタッフ···いたっけ···?」
オレたちの番組スタッフは、昔から変わらないメンバーで。
そこに新しいスタッフや新人スタッフが加入するってなった時は、必ずオレとユキに紹介してくれるし、ちゃんとスタッフパスだって番組名が入った物を首から下げてるよね?
あれがないと例え昔から仕事してる古株スタッフでも局内を歩けないしスタジオにも入れない。
···スタッフパス?
待って···?