第11章 スタートライン
「楽、ちょっと気になったんだけど···この先のブロックって確か···スタジオとか楽屋とか、そういった感じのはなかったよな?」
楽「この先?」
姉「この先のブロックって言ったらなにもないわよ?あるのは資料室やら大道具のスタッフが使ってる資材置き場とか、あとは使われていない空き部屋位しかないはずよ?」
「やっぱりそうか···」
じゃあ、愛聖はどこに行ったんだ?
もしかしたらほかのスタジオへ行く近道でもあるとか?
スタッフしか使わないような抜け道みたいなやつが、テレビ局にはいくつかあるみたいだし。
姉「でも変ね···あの子は今日、Re:valeの番組の仕事が終わったら帰るんだって言ってたわよ?そんなとこになんの用事があってスタッフに案内されてたのかしら」
「じゃあオレの見間違いだったのかな···いや、でも、あれは絶対に愛聖だと思うんだけど···」
衣装っぽい服とか着てたけど、確かに愛聖だったんだよなぁ?
姉「ちょっとアンタたち?自分たちのスケジュール、忘れてないわよね?」
片眉をピクリとさせながら言うマネージャーに背筋が伸びる。
天「ボクはとっくに身支度終わってるけど?」
楽「あぁ、俺もだ」
···マズイ。
オレはまだ半分しか終わってない···気がする。
「えっと···飛行機の時間は···っと···」
さりげなく時計を見ながら鞄に手荷物を纏めて突っ込み、そそくさとジャケットに袖を通す。
けど、なんだろう···この、変な胸騒ぎは。
自分が見掛けた愛聖の姿。
同行してたスタッフ。
あんな格好のスタッフなんて、見覚えあったかな···?
そもそもスタッフの多くはTシャツにGパン姿なのは多いけど···なんか、変だったような?
でもスタッフなら首からパス下げてるはずだし···
あの時チラッと振り返ったスタッフの姿をよく思い返す。
スタッフパス···なかった!
「マネージャー!ここの局のスタッフって、必ずパスを下げてるよね?」
姉「当たり前じゃないの!パスなしでウロウロしてるなんてモグリかなにかよ!アタシだって出入りする時は事務所専用のパス持ってるんだから···ほら!」
変な胸騒ぎは···コレだ!
「楽!さっき見掛けた愛聖と一緒にいたスタッフだけど、パス···持ってなかった!」