第11章 スタートライン
❁❁❁ 龍之介side ❁❁❁
番組収録が終わって、身支度最後の手洗いを済ませて楽屋へと続く通路を歩く。
これから沖縄へと飛ぶとか···社長もマネージャーも過密スケジュールを組むよなぁ。
ま、飛行機の中で仮眠は取れるからいいけど。
今回の仕事は故郷の沖縄よ!なんてマネージャーが言ってたけど、その仕事も母さんの再婚相手が経営するホテルのイベントだ。
時間があれば、弟たちにも会いたいけど···どうかな···?
会えないにしても、電話くらいなら···なんて考えながら歩いていれば、通路の先に見知った姿を見つけた。
あれは···愛聖じゃないか?
軽く着飾ってはいるけど、うん···間違いない。
スタッフとふたりで歩いているってことは、これからスタジオ入りでもあるのか?
いや、待て。
でもあっちの方向って確か···スタジオとかないよな?
どっちかと言えば、倉庫っぽい感じの···
じゃあ、なにしに行くんだ?
よく見れば一緒に歩いているスタッフは男性だし。
備品のチェックでもあるのか?
いずれにしても、それがもし愛聖の仕事の一部だとしたら声は掛けない方がいいのか?
いや、でも···と何度か思考を変えながらも、そう言えばさっきまで楽は愛聖といたみたいな感じだったから、楽に聞けば分かるか?なんて結論に至って自分たちの楽屋のドアを開けた。
姉「遅いわよ龍之介!地球の裏側までトイレ行ってたの?!」
「そんなに長かった?!···でも空港までは距離あるしとか、飲み物いるかな?とか考えてて···あ、そうだ。楽、いま向こうの通路で愛聖を見掛けたよ」
楽「愛聖?」
つい今さっきの事を楽に言えば、楽はスマホに向けていた顔をオレに向けた。
「あぁ。スタッフとふたりでその先へと歩いて行く後ろ姿だったけど、まだ仕事中なのかな?って思ったから声掛けなかったんだけどね」
楽「仕事?でも今日アイツはRe:valeの番組にゲスト出演だとか言ってたけどな」
天「楽はいつから愛聖のスケジュール管理をするようになったの?」
楽「うっせぇな、たまたまだ。たまたま局内で会って聞いたんだ」
会話の間にスルッと入って楽を構い出す天に笑いながら、ついでにその時に思った疑問を楽へと投げてみる。