第3章 新しい環境
小鳥遊社長の立場からしても、これから面倒見る相手が、雇用している年頃の男の家に仮住まいを続けるということに両手を上げて賛成出来る訳でもないし。
小「返事を急がせているんじゃないから安心して?ただ、どうかな?っていうだけだから」
本当は、答えなんてとっくに出てる···
ただ、私が一歩を踏み出せないだけで。
『あの···私がもし、彼らと一緒に生活するとして···迷惑だとか思われたら···』
···それが、怖い。
男の子ばかりのなかに私が加わってしまって、均整のとれた仲の良さが崩れてしまったらと思うと、なかなか踏み出せないでいる。
小「その心配はいらないと思うよ。なんせ彼らは、愛聖さんはいつになったら入寮するんだ?って万理くんに詰め寄ってたからね」
『え?』
小「同じ夢を追うものとして、早く仲良くなりたいんじゃないかなぁ?裏表のない彼らだからこそ、まだかまだかと待っているんだよ」
そう、だったんだ···
来られたら困る、とかじゃなくて良かった···
『社長、私···決めました。ぜひ、その寮で皆さんと一緒に生活してみたいです。なので···』
小「うん、いいよ。彼らには僕から連絡しよう」
小鳥遊社長はその場ですぐに寮に連絡をしてくれて、驚き混じりの···恐らく三月さんのだろう声が電話口から漏れていた。
小「運びたい荷物があるって言ったら、三月くんと壮五くんが手伝いに来てくれるって言ってたよ。部屋は空いてる所を好きに選んでくれていいからね?」
『分かりました。ありがとうございます』
万理にも、ちゃんと報告しなきゃ。
そう思った矢先に、社長室のドアがノックされ万理が入って来た。
『万理、あのね···』
お世話になりました···は、なんか違う気がする。
新しい家が決まった···も、変だよね?
なんて伝えたらいいんだろうと言葉を探していると、万理がフッと笑って私を見た。
万「···決めたんだね、愛聖」
『うん···でもまだ荷物運んだり家具揃えたりとかあるから、もう少しの間は万理の所にいても平気?』
万「もちろんだよ。それから、寮に入る前に愛聖はパジャマ買わないとだね。あの寮で、オレのシャツを着て寝るわけにはいかないだろ?」
···確かに。
そんな姿を見られたら、大騒ぎになっちゃうよね。