第11章 スタートライン
小「ふたりともお疲れ様。いいステージを見せて貰ったよ」
百「ありがとうございます!やった!マリーの社長さんに褒められた!」
社長の言葉にバンザイして喜ぶ百ちゃんがおかしくて、つい、笑ってしまう。
百「あーっ!笑ったなマリー!オレはホンキで嬉しいのに!」
『ごめんって。だって百ちゃんて、いつも感情表現が元気いっぱいだから』
そう言って笑い続ければ、百ちゃんは、オレから元気いっぱいを取ったら···千しか残らない!なんて言うから、また笑ってしまう。
千だけが残るとか、ある意味とてつもなく貴重だよ!
「小鳥遊さん、お話中すみません。ちょっと例のことで打ち合わせしたいんですが···」
小「分かりました、すぐ伺います」
あきらかに上役と思われる人から声を掛けられ、社長の表情が引き締まる。
小「愛聖さん、ちょっと席を外すけど大丈夫?」
恐らく例のことと言うのが、楽屋を荒らされた事だということを予想させる。
『大丈夫です。私はここに居るので社長の用事が終わるまで待ってます』
そう伝えると社長はすぐに戻れるようにするからと言って、呼びに来た人の後について行った。
百「あー!笑った笑った!歌の後にこれだけ笑うとさすがに喉乾いたから、飲みもの貰って来···え?」
そういう百ちゃんの前に、スっと差し出されるストローを刺したペットボトルが差し出される。
それは、確認するまでもなく···奏音さんから差し出されたもので。
奏「皆さん楽しそうにお話されてましたし、スタッフさんも忙しそうだったので私が貰ってきちゃいました。このミネラルウォーターよく冷やされていたから、きっと美味しいと思いますよ?」
百「あ、ありがと···」
ミネラルウォーター?
百ちゃんがいつも飲んでるものって言ったら、確か···
ぼんやりと考えながらそういった物が用意されているテーブルに目をやれば、そこにはちゃんと、百ちゃんお気に入りの飲み物が用意されている。
奏「ユキさんも、どうぞ?」
千「いらない」
百ちゃんに手渡したあと、もうひとつを千に向けて差し出す彼女を訝しげに見た千がその手を押し退ける。
『千、せっかくだから···』
千「いらないって言ったらいらない。どこの誰が用意したのか分からないものなんて、口に入れることは出来ない」