第11章 スタートライン
それならいいけど?と、社長は不思議そうな顔を見せながらも姿勢を正してステージへと視線を戻した。
社長って時々、ナギさんみたいな接近の仕方するからびっくりしちゃう。
まぁ、私や紡ちゃん以外はみんな高身長だから、ちょっと顔を覗くとなればみんないまの社長みたいに屈んだりもするけど。
最も、ナギさんの場合は社長や他のメンバーの比じゃないくらいの距離なんだけども。
いまはそのナギさんの距離にも慣れてきたけど、最初の頃は戸惑うことも多かったなぁ。
キメ細かい肌に透き通った憂いを満ちたアイスブルーの瞳。
耳元に寄せられた唇からは、いつだって愛の言葉を囁い···考えるのやめよう。
また私のおかしな想像が駆け出しちゃいそうだから。
ただでさえ、一織さんには落ち着きがないとか言われてたりするし。
そういう時はだいたい、四葉さんや七瀬さんとキャーキャー騒いでたりする時なんだけど。
一織さんは···もうちょっと四葉さんたちみたいに年相応な反応とかしてもいいと思うんだけど?
私が三月さんやナギさんに乗せられて、ここなちゃんのコスプレしちゃった時もなにしてるんですか?!とか言って、笑うどころか怒られたし。
パーフェクト高校生とか呼ばれるくらい、なんでもこなせて冷静ってことなんだろうけど、一緒に騒いでくれてもいいのに。
そう思わせておきながらも、あんなビックリドッキリするような事とか···
あれはホントに···女子ながらも鼻血出ちゃうかと思ったもんなぁ。
二階堂さんと万理にお試しの壁ドンして貰った後に、頬キス攻撃とか。
あたふたして見せれば、眉一つ動かさずに···
一「壁ドンは慣れているんじゃなかったんですか?」
なんて、サラッと言うし。
強烈な壁ドンの後だから、それこそ大丈夫!とか思ってたのに、一織さんの不意打ちにあって···うぅ、思い出すだけでその場所がムズムズする!
頬に手を当ててゴシゴシとすれば、またもその奇行を社長に見られてしまい。
小「大丈夫?ホントに平常運転?」
『アハハ···なんか、ひとつだけ確証出来たことがあります』
小「確証?」
『みんなの中で、一織さんがトップレベルだったってことです』
小「一織くん?」
えぇ、まぁ···と乾いたため息を吐き出しながら言えば、社長の周りにハテナマークが飛ぶのが見えた。