第11章 スタートライン
ギュッと閉じられていた腕を解き、千が微笑みを見せる。
『カッコイイRe:vale、私も期待してるから』
トンっと千の胸に手を置けば、千は微笑みを崩さぬまま私の頭にそっと手を置いた。
百「またユキは独り占めする!じゃあオレは···あ、これにしよっと!マリー、ちょっと耳貸して?」
『耳貸してって、なに?』
内緒の話でもあるのかと顔を動かせば、直後···両頬に感じる柔らかな感触。
これって、間違いなく···だよね?!
驚きを隠さずに2人の顔を見れば、まるでイタズラっ子のように百ちゃんが笑う。
百「だってさー?MEZZO"もしてたから」
『え?』
千「当然、Re:valeもいいよね?」
『は?!』
小「これは···楽しい瞬間を目撃したよ。ほら、ショットもバッチリ!事務所に連絡を入れようとスマホを出したのがナイスタイミングだったみたいだね」
ね?とニコニコ顔の社長から向けられた画面を見れば、そこにはまるであのポスターのようなアングルの写メがあって。
『しゃ···社長?!なにしてるんですか?!』
小「よく撮れてるから···グループラビチャに載せとこうっと···おっ、さっそく既読が付いた」
『ウソでしょ···』
妙にご機嫌な社長と、したり顔の千と百ちゃんを見て盛大なため息を吐いた。
「Re:valeさん、ステージの準備オッケーです!よろしくお願いします!」
スタッフの声で、Re:valeがRe:valeらしさを醸し出す。
百「特別エネルギー貰ったし、弾けてくるね!」
千「モモはいつでも、元気丸かじりだろ?僕は···もうちょっとエネルギー貰えた方が頑張れそうだけど」
『はいはい、もう充分でしょ!』
千の背中をグイグイと押しやれば、それを見ていた周りのスタッフさん達までが笑い出す。
『もう···行ってらっしゃい!』
最後にパン!と背中を叩いて、もう一度グイッと押して手を振った。
Re:valeがステージに出て行けば、たちまち大きな歓声が聞こえてくる。
その歓声を聞きながら、私は社長と···それからずっと黙ってそばにいた奏音さんと、イントロが流れ出すのを待っていた。