第11章 スタートライン
千のそれは、挨拶がわりだって知ってるからね?
そんな意味を含めて見つめれば、千の瞳がゆっくりと細くなる。
千「ウソかどうか、ここで証明しちゃう?」
『はい?!』
千「ほら、例えば···こんな風に」
『あ、ちょっと待って、千?!』
腕に閉じ込めたまま、私の後頭部に手を添えて···それはまるで仲のいい恋人同士がキスでもするような···って、えぇっ?!
『ゆ、千?!ストーップ!!』
百「ユキー!!1人だけズルい!オレも混ぜろー!はい、ギューッ!!」
『わわっ!』
傍でスタッフさんと話をしてた百ちゃんが私たちの様子に気付いて飛びついてくる。
『ちょっと千も百ちゃんもふざけっこ禁止!···もう、社長も笑ってないで助けてくださいよ···』
私たちを見てニコニコする社長に言えば、社長はさらに目を細めた。
小「いやぁ、若いって素晴らしいねぇ。僕ももうちょっと若かったら混ざったりしちゃうのになぁ···ウンウン」
『なに言ってるんですか社長!そんなこと言ってると紡ちゃんに言いつけちゃいますからね?』
小「えっ?!それは困ったなぁ」
全然困ってないじゃん!!
小「僕はデビュー前のRe:valeを知ってる。その頃の千くんに比べたら、かなり柔らかな顔をするようになったんじゃないかな?百くんだって、今の方が断然いい顔をしてる。それもきっと、周りで支えてくれたファンのみんなやスタッフ、そして何より···愛聖さんの存在が大きいからなんじゃないかなぁ?···なんて、どう?」
にこやかな目から、社長らしい真剣な顔に変わったのを見て千と百ちゃんが頷き合う。
百「もちろん!オレたちが頑張ってこれたのはマリーがいてくれたからってのもあるけど、ファンのみんなが応援してくれてるからだよ!」
千「そうね···僕たちが走り続けられるのは、ファンからの応援がエネルギーになってる」
小「それなら、いますべき事は何か?君たちなら分かってるはずだよ」
「「 はい! 」」
さすが社長···と言うべきなのか。
他社だと言うのに、社長のひと声でRe:valeの表情がキリッと引き締まる。
百「行こうユキ!」
千「愛聖、とびっきりのステージを見せてあげる。だからここで、お利口さんにお留守番してて?」
『まだそうやってお子様扱いする···』