第11章 スタートライン
百ちゃんのトーク術や、Re:valeの夫婦漫才で盛り上がり最高潮を見せた収録も終盤に近付き、残すところはRe:valeがCMタイアップとして発表した曲を歌う···という所まで来た。
ゲストとして来ていた私たちはそこで出演が終わる···という流れになったけど。
百「ね、マリー!せっかくだから端からでもいいから見てってよ!オレ頑張ってカッコよく歌うからさ!」
『大丈夫、百ちゃんはいつだってカッコイイから···でも、せっかくだからお言葉に甘えちゃおうかな?』
百「甘えて甘えて!ね、ユキもいいよね?!」
千「そうね···愛聖を甘やかすのは僕の担当だけど、たまにはモモに譲ってあげるよ」
Re:valeにそんな担当割りがあったとは知らなかったけど。
『邪魔にならないように端から見せてもらうね?百ちゃんのカッコイイ姿!あ、千も頑張ってカッよく歌っちゃう感じ?』
千「僕は頑張らなくても、いつだってカッコイイから平気···愛聖限定でね」
あはは···そうですか。
千がカッコイイとか、あんまり思ったことないけどなぁ。
普段の生活の千をずっと見て来てるから。
部屋でも楽屋でも、いつでもどこでもすぐ寝ちゃったりするし。
寝起きで声が微かに掠れてるとか、顔洗っても半分寝たままご飯食べてたりとか。
それに、子供の頃に万理と僕、どっちがカッコイイ?とか千に聞かれて、即答で万理お兄ちゃん!とか答えちゃった事もあったし。
その頃の千は、意地悪で、ひねくれ屋で、でも時々ちょっとだけ優しくて。
あれ?
その頃っていうか、千って昔と変わってない?!
昔と今の千を脳内で比べっこして、さほど変わらぬ姿に口端が緩む。
千「愛聖。そのにやけ顔···だいたいなにを想像してるか僕には丸わかりだよ?」
『えっ、う、うそ?!』
思わず顔を隠しながら、大丈夫!千は昔と変わってないから!と弁明してみせる。
千「昔と全然違う所も···あるんだけどね」
『えー···あるかなぁ??』
わざと深く考え込む素振りをすれば、ふわりと鼻を擽る···千の香り。
ん???と思って顔を上げれば、既に私は千の腕に閉じ込められていて。
千「あるよ···それは僕が、今は誰よりも愛聖を愛してるってこと」
『またそんな事ばっか言って···』