第11章 スタートライン
そう考えながらフッと息を吐けば、ベッドから立ち上がったイチがまじまじとオレを見る。
「イチ···そんなに見つめられたら、お兄さん穴だらけになっちゃうから···もう、イチのエッチ」
ふざけて体に腕を巻き付けて見せれば、やや呆れ顔のイチが大きな息を吐く。
一「念のために伝えておきますが、私はそういった趣味はありませんからご安心を。あぁそうだ···二階堂さんがそっち側だと言うなら別に個人の事なので敢えてコメントはしませんが、兄さんにはあまり近付かないようにお願いします」
「あ、はい···」
眉ひとつ動かさずに返すイチに圧倒され、思わず返事をするも···イチの醸し出すオーラに、ハッと我に返る。
「ちょーっと待ったぁ!」
一「···なんですか急に大きな声を出して」
やれやれと小さく息を吐くイチに歩み寄り、素早くイチを壁際へと追い込む。
「いいか、よーく聞いてくれ···オレはそっちの趣味はないからな」
一「なら、この状況をどう説明するつもりですか?こんな体制では、まるで私が二階堂さんに襲われかけてるとも取られてしまいますよ」
あ、まぁ、それは確かにそうだなとイチから距離を取ろうとした瞬間。
環「ヤマさん、いおりーん!マネージャーがそろそろ出掛けるって言ってん···えっと?お邪魔···しました?」
なんの前触れもなく開けられたドアが、静かに閉められていく。
タマー?!
一「四葉さん、何度も言いますけどドアを開ける時にはノックのひとつくらいしたらどうですか?」
イチ?!
今それ言ってる場合じゃないぞ?!
環「悪ぃ、今度は気をつける。じゃ、ラブラブタイム続けていいぞ」
「た、タマ?!違うからな!今のはたまたま···」
静かに閉められたドアの向こうで、タマがマネージャーになにかを報告している声がする。
一「自業自得、というところですかね」
「他人事かよ」
一「他人事ですよ、私には無縁の世界ですから。でも、巻き込まれるのは御免なので私からマネージャーに説明しておきましょう」
「だーかーら!違うっての!」
わしゃわしゃと頭を掻きながら言えば、イチは笑う。
一「分かってますよ?でも、兄さんには怪しげな行動はやめてくださいね」
クスクスと笑いながらイチは言って、ひと足先に部屋から出ていった。
オレ···立場が微妙?!