第11章 スタートライン
一「二階堂さんにそう言われるとは、お褒めに預かり光栄ですね。それから、佐伯さんの事ですが···そもそも彼女は私たちとは違ってアイドルではなく、恋愛御法度だという決まりもウチの事務所的にはないようですし、そこに関しては隠し通す必要性はないと言えるでしょう」
「その辺は···社長に報告とか相談をすれば、ってワケか」
一「実際はどうなのか分かりませんが、そう考えてもおかしくはないでしょう。ただ、どうしても隠し通したい相手であると言うならば話は別ですけどね」
恋愛御法度ではないにしても、誰にも言えないような相手···となると。
そこはやっぱり、第1候補に上がってくるのは···
「万理さんか···?」
···ないな。
あんだけ大事にしてるんだから、それはないだろ。
と、なると、あまり考えたくないけど、万理さんと対等に並ぶことができる相手となればひとりしか思い当たらないけど。
愛聖が万理さんにも話せないとなると、万理さんは消去法で最初に消える。
そうなれば当然···かどうかは分からないけど、有力候補になるのはRe:valeの···
いや、そこはやっぱり、考えたくはないけど。
···ん?
ちょっと待て?
「イチ、話が最初に戻るけど···恋愛どうのこうのは置いといて、愛聖が様子を塞ぎ出したのってあの件からだよな?そんじゃまだ変な着信が続いてるってのが1番の理由じゃね?」
一「現状で考えられるのは、それが1番じゃないんですか?」
もしかして···と思ってはいたけど、こうやって他の意見を聞いてみれば、その色も濃くなって行く。
「ダイレクトに聞くのもアリだけど、どう切り出すかなぁ」
一「なら、私が聞いてみましょう。彼女はここ、という場面で笑顔を見せて私たちを元気づけてくれてましたからね、それに彼女の中での私の立ち位置は、きっと口うるさい母親のような位置ですから」
あぁ···確かに。
なんて思ったことは内緒にして、イチなら···言葉の変化とか表情の代わり具合なんてのも細かくチェック出来るだろうと踏んで頼むことにした。
別にオレが聞いても良かったんだけど···まぁ、いっか?
イチはイチで自分で気付いてないだろうけど、愛聖と話す時は年相応の顔を見せる時あるし。
その時はオレも立ち会えばいいから。