第11章 スタートライン
車が走り出してから数分、二階堂さんは黙ったままでスマホで誰かとやり取りをしながら、時折、流れゆく窓の外を見ている。
佐伯さんのことで私と話があると言ってましたが···
「二階堂さん、話というのは?」
スマホから目を離したタイミングで、声をかけてみる。
大「あ、それな。あんまり広がるのもマズイかなとも思うし、ホテル着いてから部屋で話そう。ちょうどいまマネージャーと部屋割りについても話し終わったトコだし」
「部屋割りですか?」
大「そ。オレとイチ。ミツはナギと一緒でソウとタマとリクは3人部屋って感じ?さすがにマネージャーは誰かと同室ってワケには行かないしな」
まぁ、確かに···と納得しつつも。
「七瀬さんは···逢坂さんたちと同じ部屋で大丈夫ですか?空気の読めないあの人が一緒だと、逢坂さんの精神的負担が増えそうな気がしますが」
ただでさえ逢坂さんは、普段から四葉さんの事でいろいろと大変そうだと言うのに。
大「リクがいれば、いい意味でソウのカンフル剤になるじゃないかとお兄さんは思うんだけどね?」
「言ってる意味がよく分かりませんが···リーダー指示だと思っておきます。話は変わりますが、二階堂さん。前から聞いてみたいことがあったんです」
大「ん?」
「以前、Re:valeさんの楽屋挨拶に伺った時に思ったんですが···千さんとお知り合い···だったんですか?」
大「いや?あの時が初めてのご対面だけど、なんで?」
窓の外に顔を向けたままの二階堂さんが、こちらを振り返ることもなく言う。
「いえ、特にこれといった理由はないんですが···ただ、なんとなくそんな気がしたんです」
あの時、挨拶を交わした千さんの···ちょっとした言葉の感じから、もしかして知り合いでは?と思ったんですが。
二階堂さんが違うと言うなら、そうなんでしょう。
大「お、やっと着いたか···イチ、部屋に着いたら···」
「えぇ、分かってます」
ホテルの前に停められたタクシーを降りながら、例の話は後でな?と言う二階堂さんに頷いてみせる。
「どんな内容なのかは分かりませんが、とマネージャーに人払いをお願いしておきましょうか?」
大「あの様子じゃ頼まなくてもアイツらは大丈夫っぽいけどな」
早速、と言わんばかりに浮き足立つメンバーを見て、二階堂さんが笑った。