第11章 スタートライン
❁❁❁ 一織side ❁❁❁
三「沖縄だぁー!!」
空港を出てすぐに、兄さんが両手を上げてひと声叫ぶ。
そんな兄さんを見て、つい、顔が緩む。
陸「一織はやっぱり、ブラコンだよな?」
「ブ···違います」
見られてたんですね···しかも、七瀬さんに。
陸「絶対そうじゃん!三月のことばっかり見て喜んでるし!」
「それは七瀬さんじゃないですか!人の事、よく言えますね」
ツンと済まして言って、これ以上なにか言われる前に···と背中を向けた。
環「あ、いおりん!あのさ、これってカワイイやつだと思う?」
四葉さんにクイッと袖を引かれて、その指したものをみれば、それは確かに、いかにもふわふわとした触り心地がしそうなぬいぐるみストラップがあってガン見してしまう。
「そう、ですね···とてもカワ···コホン···どうして私に意見を求めるんですか」
緩み切ってしまいそうな自分の顔を引き締めながら四葉さんを見れば、既にその手の中に2種類のぬいぐるみストラップが並べられていて。
環「マリーがさ、カワイイお土産よろしくって言ってた」
「愛聖さんへのプレゼントなら、四葉さんが自分で選べばいいんじゃないですか?」
環「そうかもだけど、マリーがカワイイか迷ったらいおりんに聞けばいいよって言ってたし」
「なっ···!」
なぜあの人は、よりにもよって四葉さんにそんな爆弾を仕掛けるんですか!!
環「で、いおりんはどっちがカワイイって思う?こっちのうさぎがパイナップル持ってるやつ?それとも、リスがとうもろこし齧ってるやつ?」
「そ、それは···」
うさぎの愛くるしい目も、リスのプクッと膨らんだ頬も···カワイイじゃないですか!
強いて言うなら、どっちもカワイイとは思います!
···なんて、言えるはずもなく。
「よ···よつ、四葉さんがお好きな方を選んでください。私は知りません」
環「えー、いおりんのケチ」
「そういう問題じゃありません!···ですが、佐伯さんになら、リスを渡せばいいと思いますよ。この、なんとなく頬を膨らませているあたりが似ているでしょう?」
環「おぉ···言われてみれば似てるかも。じゃ、これ買ってくる。いおりん、サンキューな」
やれやれ···と大きく息を吐いて、気持ちを切り替える。