第11章 スタートライン
『違ーう!いや違わないこともないこともない···?』
百「どっち?!」
『だから内緒でーす!あ、でもね?私もMEZZO"の2人も、まさか撮られてるなんて知らなくて。あとからポスターに使いたいって監督さんから言われてびっくりしたの。ちょっと恥ずかしかったけど、でも監督さんが3人とも楽しそうないい顔だからぜひって』
千「そういう経緯があったのか···でも、確かにいい顔してるかも」
『Re:valeバージョンはどうだったのか知りたいなぁ?ね、みなさんも知りたくないですか?撮影の裏側!』
観客席に向かって言えば、そこにいる誰もがキャーキャーと言いながら拍手で答えてくれる。
百「オレたちもあるよね!とっておきの裏話!」
千「あぁ、モモがプールに飛び込んだ時に水着がスポーン!って、脱げたやつとか?」
『えっ?!』
百「ユ、ユキ?!それは言っちゃダメなやつ!」
千「そうだっけ?」
慌てる百ちゃんに、とぼける千を見てみんなが笑い出す。
百ちゃん···水着が脱げるほどの勢いって、スゴすぎるよ···?!
百「まぁ、そんないろんな話をする前に!実は今日、もう1人ゲストを呼んじゃってます!どうぞ!」
さっき私が登場した場所にライトが向けられ、カーテンが開き···とびっきりの笑顔で手を振る、見知った姿を見つける。
『奏音、さん···』
千「僕たちのバージョンで一緒に撮影した、奏音さんです」
恭しくお辞儀をして、彼女が私たちの所へ歩いてくる。
百「どうぞどうぞ!」
奏「お久しぶりです、Re:valeさん!それから佐伯さんも、またお会い出来て嬉しいです!」
距離を詰めながら隣に座る彼女から、ふわりと女性らしい香りに混ざって、妙な香りが届く。
なんだろう···どこかで嗅いだ気がするけど···
これ···なにかの匂いに、似てる。
うまく表現出来ないけど、まるでマジックやインクのようなツンとした感じの······
···インク?
まさか、ね···?
登場口の裏で顔を合わせた時、まさにさっきみたいにお久しぶりです!って言ってたし。
いくらなんでも、彼女があんな事をやるようには見えない。
疑い出したらキリがないし。
でも···だけど···
盛り上がりを見せるトークの狭間で、少しずつ思考が疑念で埋め尽くされて行った。