第11章 スタートライン
けど、こうやって話題を振ってくれるってことは、アイドリッシュセブンのみんなのことを話しやすくしてくれてるんだろうと思う。
まだ正式にデビューする日は決まってないけど、大丈夫だろうか?
そんな心配を頭に浮かべながら社長を見れば、私にわかりやすく手元でOKのサインを出してくれている。
『実は私、スケートボードなんてやった事がなくて自分で練習するにも限度があるし、途方にくれてて』
百「うんうん!マリーって意外とそういうの苦手だよね!」
···言い返せない自分が悲しい。
『それでもスタント使うって言われた時、どうしても自分がちゃんと乗れるようになりたくて練習してたら、四葉さんが練習を見てくれるようになって』
千「それってMEZZO"の四葉環くんだよね?でも、確か彼はまだ高校生で昼間は学校があるでしょ?そういう時はどうしてたの?」
『四葉さんがいない時は代わりに逢坂さんが教えてくれたり、あとは···アイドリッシュセブンのメンバーの皆さんが手が空いてる時に助けてくれて』
三月さんは、家事の合間に。
七瀬さんは、昼間の日差しが暖かい時間帯に。
ナギさんは、七瀬さんのあとに教えてくれて···スキンシップはかなり多めだったけど。
二階堂さんも、お楽しみのビールをお預けしてまで教えてくれて。
一織さんだって···売り出し中の女優がアザだらけだなんて笑えませんよ?とか言いつつも、いろいろ手厳しく指導してくれて。
『みんな、とっても優しかったな···』
その時のことを思い出して、自然とほっこりとした気持ちになって微笑みが浮かぶ、
百「あーっ!なにその嬉しそうな感じ!」
『ひ・み・つ!』
テレビ番組の収録だと分かっていても、百ちゃんや千とのやり取りは楽しくて。
『それで、たまたま私が撮影してるスタジオ内でMEZZO"がお仕事してて。帰り際に様子を見に来てくれたの。休憩時間の間ずっとボードに乗って遊んでたりして、あのポスターはその時の1場面で』
千「遊びながら、キスされてたの?」
『あれは上手に出来たご褒美くれるって言われて、なにがいい?って聞かれた時に···あー···えへへ···』
まさかここで、昔の千や万理のことは話せない。
そう思って言葉尻を笑って濁したのに。
千「ご褒美にキスをおねだりするとか···悪い子ちゃんだな」