第11章 スタートライン
百「ダーリンごめんね···お詫びに今夜サービスしちゃう!」
千「こらこら母さん。子供の前でやめなさい」
『って、私が子供役?!』
「「 他にいないでしょ!! 」」
言ってしまったから気付く···この2人の会話のノリに、つい普段と変わらないツッコミをしてしまった事に。
百「やった!作戦成功!いつもより妙におとなしくしてるから緊張解きほぐそうと思ったんだよね!」
千「みんなも知ってると思うけど、ここにいる愛聖と僕はお互いのデビュー前からの腐れ縁だから、僕たちの前でしおらしくしててもダメなんだよ」
『私は別に普通!千たちが面白くし過ぎなの!』
千「そう?僕は愛聖がこーんな小さい時から知ってるけど、おしとやかとは無縁だったと思うけど?」
指先を使ってほんとに数センチの隙間を作ったみせる千を見て、その指先を捕まえる。
『こんな小さくなかったでしょ!あの頃の私は小学生!こんなミクロじゃないから!』
百「小学生って···ユキ、スカート捲りとかしちゃってた?!」
千「したした!真っ白なものがチラチラと···」
『お巡りさーん!変態がいまーす!』
とめどなくふざけだす2人と笑い合いながら、うっかり素の自分を曝け出してしまうことに後悔しながらも、そんな時間が楽しくなって···スタジオの隅でにこやかにしている社長をチラ見する。
社長がああやって笑ってるってことは、このままいつもの私で話してて大丈夫ってことだよね?
だったら、いっか?
過去は過去。
現在は現在···どちらもホントの私なんだから。
キャッキャと騒ぎなからトークを進めていけば、その面白さに観客のみんながとうに忘れてしまったかも知れない最初の話題を百ちゃんが放り込んで来る。
百「で、最初に戻るけど。マリーは···あ、もう普通に呼んじゃっていいよね?佐伯さんとか、呼びにくいしさ!」
『まぁ、いいけど?』
百「じゃ、決まり!あのCMのマリーバージョンって、結構大変だったじゃん?スケボーのシーンとか、スタント使わないで自分でやってたし!あれっていつ練習とかしてたの?」
千「そうね···運動音痴の愛聖が短期間で乗れるようになるとか···秘密の特訓でもした?」
千も百ちゃんも、ホントは誰が私の練習に付き合ってくれたのかは知ってる。