第11章 スタートライン
千と百ちゃんがいつもの流れを作りながら収録を始めてから、観覧席のお客さんたちと早くも盛り上がりを見せ···そして。
百「ユキ、そろそろ今日の特別ゲスト呼んじゃう?」
千「そうね···いつになったら呼んでくれるのかってソワソワしてるかも知れないしね」
えっと···?
そこまでソワソワとかしてませんけどね。
それに、急にハードル高くするのはやめてよ。
そんな風に言ったら、観客席のみんなが期待度膨らむでしょうに。
百「それじゃ、さっそく呼んじゃうよ!!今日のスペシャルゲストは···佐伯 愛聖さんです!どーぞ!!」
百ちゃんからの声に、スタッフがスイッチを押して、
目の前のカーテンがふわりと揺れ、私に小さなスポットライトが当てられたのを感じてお辞儀をして見せた。
百「今日はあのウワサのCMで人気上昇中の佐伯 愛聖さんに撮影のいろんな裏話を聞いちゃいたいと思いまーす!」
千「そうそう!MEZZO"とのポスターがあちこちで剥がされてるって聞いてるよ?」
『えっ?!そうなんですか?』
「「 そうなんです!! 」」
息ピッタリのツッコミに観客席から笑いが起きる。
どうぞどうぞとエスコートされながら、セットの大きなソファーに座り、眩いライトに目細めた。
百「さっそくだけどさ!オレたちも別バージョンで撮影したCMの話をしよっか!」
千「モモ、張り切り過ぎ。でも僕も···聞きたいかも」
···あのねぇ。
苦笑を浮かべながらふたりの顔を交互に見れば、期待に満ちた目で私を見つめるふたりの顔があった。
『裏話って言われても、えっと···なにをそんなに期待してるのかな』
百「それはもちろん、あのポスターがどういう経緯で作られたか!だよ!」
千「そうね···打ち合わせの時に監督からも何も聞いてなかったけど、CMが流れ始めたと同時にポスターが貼り出されて···しかも、ねぇ···モモ?」
百「そう!いまをときめくMEZZO"の2人が両方からキスとか!モモちゃんも真ん中に入りたかった!!」
···そっちかい!
千「モモ···それ浮気?」
百「ち、違うよダーリン!軽いジョークだってば!オレが愛してるのはダーリンだけ!」
千「フフッ···知ってる」
あぁ、ゲストを放置して夫婦漫才が始まったか···