第11章 スタートライン
ジェントル···って···
千「愛聖。大事なことは、きちんと話が出来る人に任せた方がいい」
小「そうだよ愛聖さん?こういう時の為の僕だからね?あんまり活躍がない方が、ホントはいいんだけど」
ね?とにこやかな顔を見せて社長が頷く。
姉「はい、出来上がり···う~ん、カワイイカワイイ」
クルクルと巻いた髪を指で遊びながら、姉鷺さんは満足気に笑顔を浮かべる。
百「おぉっ···さっすがカオルちゃん!」
小「やっぱりこういった支度は、女性にするのが1番だ」
千「···女性?」
社長が女性と言った部分に千が疑問符を投げかければ、それを見て姉鷺さんが眉を跳ねさせる。
姉「ちょっとなによ?アンタのそのキレイな髪も···巻いて差し上げようかしら?」
姉鷺さんが、まだ熱の篭ったヘアアイロンをカチカチを鳴らしながら近付けば、千はスッと距離を取った。
姉「アタシは事情があって愛聖に何があったのか知っちゃったけど。誰がやったのかも分からないし、気をつけなさい?ここは大きなテレビ局で、誰がどんな人なのかなんていちいち調べながら仕事するなんて出来ないんだから。どこへ行くにも1人で行動するのはダメよ?」
『そうですね···気をつけます』
姉「必要とあらば、トイレやシャワーだって社長さんと一緒に!」
小「えっ?!僕?!」
百「トイレ?!」
千「シャワー···」
『あ、あの姉鷺さん?!さすがにそれはちょっと···』
その場にいる全員が慌て出す中、私もシャワーやトイレに社長を···なんて到底ムリだ!とオロオロしてしまう。
姉「や~ね、冗談よ」
「「 冗談かい!! 」」
小「まぁ···うん、僕は必要とあらば例え愛聖さんが裸でいても飛び込む覚悟はあるけど」
「「 裸っ?! 」」
う、うそ?!
思わず自分の体を隠すように腕を巻けば、それを見て社長が笑う。
小「例えばの話だよ。でもね、所属するタレントを守るって言うことは、そういう事だから。そしてそれは、きっと僕だけじゃない」
いつになく真剣な顔を見せる社長から目を離せずにいると、社長はすぐにいつもの穏やかな顔に戻った。
「すみません!お待たせしました!みなさん移動お願いします!」
ノックされたドアからスタッフが顔を出す。
それに頷いて、私たちは立ち上がった。