第11章 スタートライン
百「だからカオルちゃんが来たのか!」
『すみません姉鷺さん···毎回こんな事をお願いしてしまって』
Re:valeの番組には変更がなく、ならば、身支度をどうしようかという話になった時、ドアがノックされて、手荷物いっぱいの姉鷺さんが立っていた時は驚いたけど。
それが楽から言われたからって事を聞いて、百ちゃんと私は、だからあの時に楽は···と納得した。
姉「楽が急にアタシを引っ張りだした時は何事かと思ったけど···ま、こういう理由なら仕方ないわよ。はい、出来た···あとは···ん~···そうねぇ、せっかくだから髪、巻いちゃいましょ!」
『さすがにそこまでは姉鷺さんも時間が···』
姉「大丈夫よ。TRIGGERのゴタゴタの方は用事が済んでるから時間なら気にしなくていいわよ?今頃あの子たちは自分で支度してるから。それに、アンタこそ···こんな事があったんですもの。とびっきりアタシがオシャレさせてあ・げ・る!」
パチン!とウインクをして、機嫌よく鼻歌を歌いながら私の髪を巻き始める姉鷺さんに、お手数お掛けします···と鏡越しに笑い合う。
ただ、ここは一応···Re:valeの楽屋だから。
その鼻歌がTRIGGERって言うのはどうなんだろうかと、ちょっと思ったりもするけど。
小「業務外で、しかも他のタレントのお世話をだなんて、僕からもお礼を言わせて貰うよ。ありがとう、姉鷺さん···八乙女には、僕からちゃんと説明しておくから」
どういう経緯で姉鷺さんが···と聞かれたら、社長はありのままを話すんだろうか。
限られた人間だけを集めて話をしてくれたのに、でもそこを説明しなければ···どうにもならないし。
局側からスタイリストさんたちを集める事も可能ではあったけど、楽が気を使ってくれた事を後々···八乙女社長に怒られてしまうんじゃないかという心配もある。
姉「愛聖、アンタねぇ···そんな顔したらアタシのせっかくの努力がムダじゃないの!」
『あっ、ごめんなさい···ちょっと考え事してて』
ルージュを引こうとする姉鷺さんに言って、眉を下げた。
姉「アンタの考えてる事なんて分かるわよ?どうせ、社長に話が行ったら楽が怒られるんじゃないか···でしょ?」
『だって、そうかな?って』
姉「そういう面倒なことは、ここにいるジェントルマンに任せなさい?」