第11章 スタートライン
❁❁❁ 楽side ❁❁❁
姉「ちょっと?アタシと目が合うなり引っ張って来たと思ったらこんな店に来るなんてアンタ女装でもするつもりなの?」
百さんに愛聖を預けた後、楽屋に戻って早々に姉鷺を見つけて局の近くのブティックへと足を運んだ。
「うるさい···黙って選べ」
姉「あら?アタシにプレゼントでもしてくれるの?」
「違う!······だ」
姉「え、なになに?よく聞こえなかったけど?」
分かっててやってんのか、それともわざとそう見えるようにしてんのか、姉鷺は軽く腕を組んで俺に笑いかける。
「···愛聖のサイズを見ろ、あとは俺が」
あの部屋で見た衣装は、どれもこれも使いモンにならなくなってた。
ああいった事態になってるんだから、局からまた違うものを用意されるだろうとは思うが···それなら俺が、と思い付いて見たものの。
サイズが合わなかったらどうしようもないと思ってた所に姉鷺がいて。
TRIGGERの専属マネージャーになる前は愛聖の世話係をしてたんだから、サイズくらい知ってるだろ。
姉「愛聖の?またどうして···なんて言うのも、その顔を見る限り時間の無駄ね」
「分かってんなら早くしろ···あ、待て。そのデザインは露出度高過ぎる」
姉「そういう所ホント社長に···っとと、そんな怖い顔しないの!イケメンが台無しよ?···あの子のサイズは···」
姉鷺にサイズを見て貰いながらタイプの違う数着の服を買い込み、そのまま押し付けるように持たせた。
「いらなかったら捨てるなり好きにしろと伝えてくれ」
姉「楽が直接渡せばいいじゃない」
「···うるさい。それからあいつは今Re:valeの楽屋にいるから、メイク道具も忘れずに持っていけよ」
姉「なんで?」
「行けばわかる。じゃあな」
姉「ちょっと楽?!」
まだなにか言おうとする姉鷺を置いて先に歩き出す。
愛聖は、出演キャンセルはしたくないと言ってた。
あの社長も、出来るだけ愛聖の意向に添えるように話をしてくるからとも。
なら、なにかしら条件はついてもキャンセルはしないだろうから、姉鷺に押し付けた物も、少しは役に立つだろう。
「そろそろ戻るか、天はうるさいからな」
誰に言うでもなく呟いて、自分の楽屋へと足を向けた。