第11章 スタートライン
百「マリー。もし···気持ちが落ち着かないんだったら今回の出演考え直してみるのはどう?あんな事があったワケだし、ドタキャンしなきゃいけない理由も成立してるから」
千「そうね···安全を最優先に考えたら、それが1番だと僕も思うよ」
千と百ちゃんが言いたいことは分かる。
普通なら、あんな事があれば誰だって出演辞退を考えて身の安全を優先するだろうけど。
『大丈夫。落ち着くにはもう少し時間が掛かるかもだけど、私だって立派···かどうかは怪しいけど、ちゃんとプロだから。新人枠ではあるけど仕事は仕事でちゃんとするから』
まだまだ白い部分が多いスケジュール。
それをひとつでも埋めていくには、それなりに努力も根性も必要だから。
みんながスタートラインに立つことが出来たいま、私がちょっとのことで挫ける姿は見せたくないし。
変な意地かも知れないけど、みんなは私の事をちゃんとした部分でキャリア持ちの先輩だと思ってくれている。
だったら尚更、その気持ちを大事にする為にも···踏ん張らないと。
いつか社長が、私にしかみんなに教えられないこともあるって言ってた。
だからといって、今がその時じゃないってことも分かってるけど。
私は、いまを頑張りたい。
小「失礼します···っと。Re:valeさんにはいつもお世話になってます」
ノックされたドアを百ちゃんが開ければ、そこには小鳥遊社長がにこやかに立っていて、招き入れられるままにそっと楽屋に入って来る。
小「随分と待たせてしまって、申し訳なかったね」
『いえ、それは大丈夫です。それより社長にはいろいろと大変な事をお願いしてすみませんでした。それで、あの···』
戻って来たばかりの社長に答えを催促するようで申し訳ないと思いながらも、ちょっとばかり顔色を伺ってしまう。
小「今回のRe:valeさんの番組、ちゃんと出演させて貰えるようになったから大丈夫だよ。当初は愛聖さんが出演辞退するんじゃないかって思われてたけど、そこはキミの気持ちをちゃんと伝えて変更なしで行くことになった。ただ、こちらとしては条件を出させて貰ったけどね?」
『条件、ですか?』
小「その条件によって、多少なりともRe:valeさんには迷惑かけてしまうことにはなったけど、僕としてはそれが最良だと思ったからね」