第11章 スタートライン
❁❁❁ 百side ❁❁❁
なんだよ、これ···いったい誰が···
目の前に広がる状況に、動揺する。
『百ちゃん、誰かいるの?』
マズイ···そう思った時には遅く、マリーが中を見てしまう。
『なに、これ···』
楽屋の中を見たマリーが言葉を詰まらせ、動揺を隠せないでいる。
楽「中がどうかしたのか?···これは···」
楽も中を見て口を閉ざす。
それもそうだよな···だってこの状況、オレだっていま凄い驚いちゃってて、どうしたらいいか分からずにいるんだから。
恐らくマリーの手荷物であろうものが荒らされていて。
今日の為に用意されたと思われる衣装が全て切り裂かれ。
なにかの塗料?みたいな物で赤く染められていて。
トドメと言わんばかりに、壁にはめ込まれた鏡には···一面に大きな文字で···
【 次は お前の番だ 】
と書かれている。
これって、もしかして···もしかしなくても。
脅迫、だよな?
小「あれ?どうしたのキミたち揃ってそんな所に」
呆然と立ち尽くすオレ達の背後から、マリーの所の社長が声を掛けてきた。
『あの、それが···』
「マリー、大丈夫だから。ここはオレが社長さんに説明するよ」
小刻みに震えるマリーの体をそっと抱きしめてから、楽にマリーを委ねる。
「社長さん。ちょっとこれを見て下さい」
ドアを全開にして、社長さんにも見えるようにその場から1歩下がる。
小「これはいったい···」
驚く社長さんに、オレたちがここにいる経緯を話せば、社長さんは眉を寄せて自分が最初に中に入ってみるよと言った。
小「まだ誰も中までは入ってないんだよね?だったら僕が中を調べてくるよ」
楽「もしまだ誰かいたらどうするんですか?」
楽の言葉にオレも大きく頷いて見せた。
小「だからこそ、僕が行くんだよ。百くんも、楽くんも、それぞれのプロダクションの大事なタレントだ。愛聖さんと3人、プロダクションは違えどケガなんてさせたら大変だからね」
『でも、社長···!』
小「大丈夫だよ、愛聖さん。さすがにここまで壮大なのは僕も初めてだけど、長いこと芸能プロダクションの代表を務めているとね、いろんな事を経験はしてるから」