第11章 スタートライン
とっくに閉じてしまったエレベーターのボタンを押し、数字が降りてくるのを見上げる。
百「オレも一緒に行くよ。もしかしたらオレの勘違いかも知れないし、そしたらマリーにゴメン!って言わなきゃだろ?」
なっ?と笑った百ちゃんが隣に並ぶけど、さっきの百ちゃんの話じゃ···楽屋を間違えてるって事は考えにくい。
楽「なら、俺も。こういう時、人数が多い方がいいだろ」
そう言いながら楽も隣に立ち、ようやく開いたエレベーターのドアをスッと手で押さえ···エスコートするかのように私の背中を押した。
『あら?楽ってば急に紳士っぽい?』
楽「は?俺はいつだって紳士だろうが」
『どうだか?』
楽「フン···言ってろ」
不安が徐々に入り交じってくる気持ちを隠すようにおどけて言えば、楽はフッ···と鼻で笑いながら私の楽屋がある階を押した。
百「着いたよ」
エレベーターのドアが開き、百ちゃんが先に降りる。
私と楽も百ちゃんに続いて降りて、楽屋までの通路を歩き出した。
『あれ、ドアが···』
楽屋の前まで来てみれば、私が出る時には閉めたはずのドアが少しだけ開いたままになっていて。
百「オレが来た時は鍵だってかかってたのに」
同じようにドアを見た百ちゃんが私たちを見て、そう言った。
『と、とにかく入るね』
そう言ってドアに手を伸ばせば、その手を楽に止められる。
楽「オレが先に入る。お前は百さんといろ」
百「待って。それならオレがドアを開けて中を見るよ。楽は···マリーを頼む」
楽「大先輩をそういう役割にする訳には」
百「大丈夫だって。Re:valeがここまで来るまでに多くの修羅場を駆け抜けて来たんだから、腕っぷしには自身アリ!」
ブンブンと腕を振る百ちゃんに苦笑を浮かべながら、楽が私の前に背中を置いた。
百「じゃ、開けるね···っと電気のスイッチはこの辺に···え···?」
少し開いていたドアを押し広げた百ちゃんが、明かりをつけて小さく疑問の声を上げる。
『百ちゃん、誰かいたの?』
楽の後ろから出て、百ちゃんの背中越しに楽屋を覗いて···言葉を失った。
『なに、これ···』
そこには、私が部屋を出る前までにあった···整った部屋はなかった···