第11章 スタートライン
『あれ、楽だ』
楽「なんだ愛聖かよ···今日は仕事か?」
『なんだって失礼ね!それに仕事じゃなかったら局入りはしないでしょ?』
楽屋に荷物を置いたあと、社長は打ち合わせに行ってくると出てしまい···まだ時間は早いから平気かな?って、1階の売店まで足を伸ばした帰りにバッタリ楽と会った。
『今日はね、NEXT Re:vale の収録なの。まだ時間には全然早いし社長は打ち合わせ出てるから··それで、これ』
お菓子や飲み物が入った売店の袋を見せれば、その中から楽が缶コーヒーをひとつ取った。
『あ、ちょっと?』
楽「いいだろ、1個くらい。ケチケチすんなって」
ケチケチって、あのねぇ···
しょうがないなぁ···なんて言いながら笑って、楽がプルタブを開けるのを眺めていた。
『そう言えばTRIGGERで?それとも、楽だけ?』
楽「TRIGGERでの仕事だけど、ちょっと関係者のやつと親父が揉めてて···ったく、そのせいでどんだけ待たされてんだか。飛行機の時間もあるってのに」
『飛行機?』
何気なく聞き返せば、この後の仕事が終わったら空港に向かって、TRIGGERも仕事で沖縄へ経つんだと聞いた。
『いいなぁ、沖縄とか』
そう呟けば、楽は楽で、遊びで行くならまだしも仕事オンリーじゃな···と言って、大きなため息を吐いて缶コーヒーをひと口飲み、私に手を伸ばす。
楽「それ···」
『まだなにか欲しいものでも?』
楽「違ぇよ。それ、持ってやる。で、暇潰しついでに楽屋まで送ってやる」
『それは大丈夫だよ?たいして重くないし、楽屋まで迷子になるようなことはないから』
ほら?と袋を上げ下げして見せれば、楽は私の手から袋を奪う。
楽「いいから寄越せ···手、まだ治ったばっかなんだろ?」
あぁ、そういう事か。
『楽の優しさは分かりにくいですなぁ···でも、ありがとう』
楽「うっせぇな。楽屋はどこだ?」
それなら···と階と場所を言えば、随分と普通の楽屋の階だな?と楽が眉を寄せる。
『普通のって、別に私ひとりなんだし広いくらいだけど?』
そりゃあ、TRIGGERと比べたら狭いかも知れないけど、私ひとりが使うにしては寮の私の部屋の倍以上あるのに。
今回は番組側が気を使ってくれて広めの部屋を用意してくれたみたいだから感謝しなきゃだし。