第1章 輝きの外側へ
❁❁❁ 龍之介side ❁❁❁
愛聖を引き留めることが出来なかったオレは、足取りも重く事務所に戻った。
楽は···社長とどんな話をしているのだろう。
元より仲がいいとはお世辞にも言えない二人だから、揉めたりしてなきゃいいけど。
普段の言い合いを想像して、足どころか心まで重くなりながら社長室の前まで来ると、開け放たれた状態のドアからそっと中を覗く。
八「用はそれだけか。ならば、早く立ち去れ」
楽「ふざけんな!!」
社長の言葉に、楽は握った拳を怒りに震わせながら振り上げた。
マズイ!
「やめろ楽!!」
咄嗟に部屋に駆け込み、今にも社長に殴りかかりそうな楽の体を抱き押さえる。
何を言われようと楽を離さないオレと、それを見て無駄な時間だと言った社長に鋭い視線を投げ、楽は部屋を出て行く。
「失礼します···」
深々と社長に頭を下げ、すぐさま楽の後を追った。
「楽、待ってくれ!」
呼び止める声に、楽はピタリと足を止め振り返る。
楽「龍、アイツは?」
そう聞かれ、オレは無言で首を振った。
「ここじゃなんだし、とりあえずオレの部屋に」
楽「···分かった」
オレの部屋に場所を移し、早く話せという顔を見せる楽にとりあえず落ち着けよとコーヒーを出す。
「結論から言うと···」
カップに口を付けたのを確認して、オレが追い掛けた後の事を楽に話すと、楽は眉を寄せた。
楽「行く宛なんか、ないだろうが···」
「最後の笑顔が、精一杯の演技だってことは···オレだって分かってたさ。だけど、止めるのも聞かずに」
楽「分かった、もういい」
楽はそれきり口を開くことなく、無言でカップの中身を飲み干した。
楽に言ったら怒られそうだけど、こういう感じの所は社長に似てる。
まぁ、社長の方が数段圧力が凄いけどね。
楽「おい。アイツが立ち寄りそうな所はどこかあるか?」
「心当たりはないけど···でも、もしかしたら、あの人には連絡位···してるかもね」
昔、一時的に仲間同士で生活を共にした事があると言ってたから。
楽「···Re:valeの千さん、か。けど俺、連絡先知らないしな···」
「あぁ、それならオレが」
前にお互いの電話番号を交換した事を思い出し、その連絡先を指で辿った。