第1章 輝きの外側へ
❁❁❁ 楽side ❁❁❁
さっきの話、マジだったら···
いや、親父の事だ。
ウソ間違いだと言う事はないだろう。
イラつく思考を纏わせながら、足早に社長室へと向かう。
龍は間に合ったんだろうか。
クソッ···
苛立ち任せに社長室のドアを押し開ける。
「おい!どういう事だ!」
八「ノックもなしにドアを開けるとは不躾だな。いったいお前はどんな教養を受けて来たんだ」
「そんな事はどうでもいい!どういう事だと聞いてるんだ!」
目を通している書類から視線を外さずにサラリと言う親父に、更に苛立ちを覚える。
八「何の事か分からんな」
「アイツの、佐伯 愛聖の事だ!なぜ急に追い出した!」
八「あぁ、その事か」
アイツの名前を出すと、さもとうに忘れていた事を思い出すかのように答えが返って来る。
八「ウチに必要がなくなったからだ、とでも言えば···お前は満足か?」
「なっ!!」
八「佐伯の人気や知名度も低迷していた。そしてこれ以上、面倒を見てやる必要がない。自分の持ってるモノを使って仕事を取れと言っても、それも出来ない安価な女だったからな」
自分の持ってる、モノ?
「どういう事だ」
八「自分で自分を売り込め、と言っただけだ。だが、それも出来なかった。ただそれだけの事だ」
まさか···コイツは愛聖に女を売れと、言ったのか?
「どこまで腐ってんだ!」
八「どう取られても構わないが、お前の言う腐った奴に世話になってるのは誰だ」
自分の立場と、どこにもやり切れない怒りで握った拳が震えた。
八「用はそれだけか。ならば、早く立ち去れ」
「ふざけんな!!」
龍「やめろ楽!!」
怒りに任せた拳を振り上げると、駆け込んで来た龍に体を抱え込まれる。
「離せ!コイツのせいでアイツは!」
龍「それでも暴力はダメだ!···愛聖もそんな事は望んでいないだろ!」
龍の言葉にハッと息を飲んだ。
八「何をしている。こんな無駄な時間があるなら他にやる事があるだろう」
「チッ···行くぞ、龍!」
龍「楽!···失礼します」
律儀に頭を下げる龍をすり抜け、俺は部屋から出た。
龍が静かにドアを閉め、俺の後を追ってくる。
龍「楽、待ってくれ!」
呼び止める声に、俺は足を止めた。