第10章 不測の事態
「はい、これは親子丼です。熱いので気をつけてください」
『え、あ、はい···』
手渡しで向けられた親子丼に手を伸ばすと、私の背後からニュッと伸びる腕がそれを受け取った。
『四葉さん?!』
振り向けばそこに四葉さんがいて、両方にお蕎麦と親子丼を掲げて立っていた。
環「マリー、ケガ治ったばっかだし危ねぇじゃん?だから俺が持つし」
『ありがとうございます。でもこれくらいなら私は大丈夫ですよ?』
環「んー···でもまだちょっとは痛いだろ?髪乾かしたりとか俺がやってんし」
「はぁ?!」
あ、なんかヤバい···
『よ、四葉さん?!あの、先に戻ってご飯半分食べてていいですから!ね?···ね?!』
この感じだと四葉さんも楽には気付いてないから、これ以上ややこしい事にならない内にみんなの所に戻さないと!
環「じゃあマリーは今日は俺の隣な?その方が半分こで食べんの楽だし。手が痛かったら、みっきーとか、そーちゃんとかみたいにアーンとかしてやれっから。あ、順番でいおりんもやってたよな?あとヤマさんも」
や、やめて!
それいま話すのやめて?!
紡「皆さん、愛聖さんのお世話するの楽しそうでしたから、それに普段から仲良しですよね~」
おーい、紡ちゃーん?!
「あ···ははっ···な、仲がいいのは、いい事ですよね···」
『そ、そうですね···』
引き攣りながらも営業スマイルを見せ続ける楽に、わたしもなぜか営業スマイルを返す。
ここは早く代金を払って楽に帰って貰うことにしようと考えて財布を開けて1万円札を渡せば。
「あっ、すみません。細かいのが足りない様なのでバイクまで戻って取って来ます」
ウソでしょ?!
出前の配達員が小銭持ち歩かないとか!!
紡「あ、それなら私が一緒に外に行って受け取って来ます。配達とか、お忙しいでしょうから」
『だ、大丈夫、私が行くから!紡ちゃんはお蕎麦が美味しいうちに先に食べてて?私はお蕎麦じゃないからさ、ね?』
「お手数お掛けしてすみませんね、じゃ、お願いします」
紡ちゃんを押し戻して、代わりに私が靴を履いて外に出る。
『すぐ戻るから、みんなにも食べててって言って?』
その言葉の後に紡ちゃんがふんわりと微笑むのを見てから静かにドアを閉めた。
はぁ、いろいろびっくりした···