第10章 不測の事態
千「言っとくけど、怒ってる訳じゃないから。あ、ちょっとは怒ってるけど、でも、ちゃんとこうして体温感じる事が出来たし、別に···いい」
あ、あれ···?
ゆっくりと重みがかかる感じに、咄嗟に腕を伸ばす。
『千?』
千「あぁ、ゴメン···ちょっと、眠い···」
ふぅ···っと息を吐いたと思えば、それと同時にグラリと体を傾ける、千。
『ゆ、千?ちょっと···え···えっ?!』
脱力した千の体の重さに耐えかねて、抱きとめたまま床に座り込む。
まさか具合いが悪いんじゃ···と額に手を当てても、特別熱があるようには感じられない。
でも、このままじゃどうしようもないし、助けを呼ぶしか···
不安定な体制のままでなんとか片手を伸ばし、閉じられたドアのノブを掴んで押し開く。
『百ちゃん!···百ちゃん千が!早く来て!』
出来る限りの声を上げれば、何事かと百ちゃんや岡崎さんが駆け付けてくれた。
百「マリー、どうし···ユキ?!」
岡「千くん?!」
2人が千の名前を呼びながら体を揺すれば、千が僅かに目を開ける。
千「モモ、少し寝かせて···愛聖の顔みたら、気が緩んだ···」
···は?
百「ハハッ···オッケー。全く驚かせんなよな···ユキってば···」
岡「寝てますね···完全に」
岡崎さんに言われて千を見れば、すぅすぅと静かな寝息を立てている。
『えっと···?』
倒れた···訳では、ないんだよね?
でも、寝てるってなに?!
確かに千は、眠いとどこでも寝ちやったりとかするけど!
い、いまのは心臓に悪いって言うか!
百「とりあえずユキをなんとかしないと、マリーがどうにもならないから···おかりん、手伝って?」
岡「そうですね、そうしましょう。最近、千くんはあまり良い睡眠を取れていなかったようですから」
『それって、どういう?』
顔を上げて百ちゃんを見れば、詳しい話は後で!って言って私と千の体の隙間に手を入れた。
百「ぐぬぬ···ダーリンってば、重い···」
岡「一見細く見えるのに、鍛えてますからね。よいしょ、っと···佐伯さん、今のうちに抜け出して下さい」
2人で体を浮かせた隙に、私もズリズリと自分の体を引き抜いた。
百「おかりん、そのソファーでいいよね?」