第10章 不測の事態
千「アイドリッシュセブン···あぁ、あの7人の小人たちの···よろしくね、小鳥遊さん」
百ちゃんの後ろから顔を出した千が、にっこりと笑顔を見せて紡ちゃんに挨拶をする。
百「っていうか、ここで立ち話もなんだからさ、入って入って」
スッと外に出た百ちゃんに背中を押されながら、私と紡ちゃんが中へと案内される。
百「いまおかりんがお茶の準備してるから、ゆっくりしてってよ」
紡「あ、はい、すみません。お邪魔します」
動きにぎこちない紡ちゃんに、懐っこい百ちゃんがエスコートしながら部屋へと進む。
『千、百ちゃん妙に嬉しそうだけど大丈夫かな?』
隣に立った千を見上げて言えば、千は彼女の事はモモに任せとけばいいよ、と目を細めた。
『あ、そうだ。千、ノートに幾つか詞を書いてみたんだけど、いま渡した方がいい?』
千「そうね···でも、その前に愛聖はちょっとこっちに来て」
クイッと引っ張られて、すぐ横にあるドアの中へと押し込められる。
『ちょっと千、急に引っ張ったりしたらビックリするでしょ···って、千?』
パタンと閉じられたドアに背中を預けるようにして、千が私をギュッと抱き寄せる。
『千···苦しいよ』
もがくように言えば、それでも千は解放してくれる気配を感じさせずに、さらに抱き寄せた。
千「愛聖、なんで僕に黙ってた?」
『黙ってた?···って?』
千「モモが龍之介くんから聞いたって。愛聖がこの前、大変な目にあってたんだって事を」
大変な目にって言われたことで、きっとあの騒ぎのことだとすぐに分かったけど、どうして龍がそれを知っているんだろうと口を閉ざす。
千「あの時、僕と約束した事を忘れた?なにかあったらちゃんと話すって」
『それは、忘れてはない。けど、』
千「じゃあ、どうして?それを聞かされた時、僕がどれだけ心配したか」
本当は言わなかったんじゃなくて、言えなかったんだけど···
千にそれを言ったら、また彼女が悪く扱われてしまんじゃないかと思ったから。
天にも千にもいろいろと話はされたけど、まだ自分の中で彼女が私を恨んでる···なんて事が飲み込み切れなくて。
どうしても、信じられなくて。
『ごめんなさい···次からは、ちゃんとするから』
そう言ってその場を凌ぐしか出来なかった。