第10章 不測の事態
紡「なんだか緊張してきました···」
岡崎事務所と書かれたドアの前で、ハァ···と大きく息を吐きながら紡ちゃんが言う。
『ここは私も初めて来る所だから大丈夫だよ?それから···紡ちゃんも忙しいのに、ごめんなさい···』
隣で大袈裟なくらいの深呼吸を繰り返す紡ちゃんに言えば、他事務所に来る事が緊張の原因ではないと苦笑を見せた。
紡「これも仕事ですから気にしないで下さい。それと、ただならぬ緊張はこれからRe:valeさんに直接お会いするからで、あまりの緊張で右手と右足が一緒に出そうで」
『千も百ちゃんも、そんなに緊張するほど怖くはないよ?どっちかと言うと···お嫁に行けなくなったら社長になんて謝罪をしたらいいのか私が悩む感じかも?』
紡「えっ?!」
だって、こんなに可愛らしくて女の子らしい紡ちゃんを見れば、千はともかく百ちゃんは大喜びしそうだから。
『えっと···もしもがあったら、私が紡ちゃんを守るから安心して?』
紡「それじゃ私と愛聖さんの立場が逆じゃないですか」
クスクスと笑う感じが、きっと世の中の男性はこんな感じの女の子が好きなんだろうなぁ···と思わせるくらい、可愛くて。
社長が常々、目を光らせているのが分かる気もする。
それでは、気合を入れて行きましょうか?なんて笑いながら、紡ちゃんがインターフォンを押した。
ー はーい! ー
この声、間違いなく···百ちゃんだ。
紡「あの、私、小鳥遊プロダクションの者ですが、本日お約束を頂いておりましてお伺いさせて頂きました」
ー 待ってたよー!あれ?マリーじゃない??やっべ···い、いまお迎えに上がります! ー
お迎え上がりますって、百ちゃん···執事じゃないんだから。
数秒と待たずにドアが開けられて、中から百ちゃんが顔を出した。
百「あれ、やっぱりそうだ。今日は社長さんじゃないんだね?」
私も紡ちゃんを交互に見た百ちゃんが、そこに社長の姿がない事に首を傾げる。
『今日はちょっと都合があって、社長の同行じゃないの』
紡「あ···申し遅れました!私、小鳥遊プロダクションの小鳥遊紡と申します。宜しくお願い致します!」
百「小鳥遊···って、社長の?!」
『そう、ウチの社長のお嬢さん。普段はアイドリッシュセブンのマネージャーをしてるの』