第10章 不測の事態
❁❁❁ 壮五side ❁❁❁
「そういう事なら、愛聖さんを優先してくれていいよ。MEZZO"の方は僕が環くんを時間管理するだけだから大丈夫」
紡「すみません、壮五さん···ただでさえ、今までも負担が多かったのに」
寮に来たマネージャーが、たまたま廊下掃除をしていた僕を見て駆け寄って来たと思えば、愛聖さんのマネージャー代理を社長から頼まれたと話されて。
「気にしなくて大丈夫だから。それに、愛聖さんもマネージャーが一緒にいてくれる方が気持ちが落ち着くだろうし」
紡「そう言って頂けるとありがたいです···宜しくお願いします。あ、でも何かありましたら私か社長に連絡はして下さいね?」
「うん、分かってる。みんなには僕から伝えておくから、マネージャーは愛聖さんの方のスケジュールを確認してあげて?」
紡「重ね重ねすみません···」
大きくお辞儀をして愛聖さんの所に向かうマネージャーを見ながら、こないだの騒ぎを思い出す。
確かにあんなのは、誰かが意図的にしたとしか思えない。
じゃあ誰が?と聞かれたら、それは僕にも分からないけど···でも。
一晩であれだけ憔悴し切った様子を見せた愛聖さんの事を考えると、それだけ怖い思いをしたんだな···と僕も胸が痛む。
社長からは、万理さんが素早く行動したから事態は落ち着いたって聞いたけど、あの日以来、まだ愛聖さんは食事の量も減ったままだし。
三月さんがいろいろと考えて愛聖さんが好きな物や、今まで食べた中で美味しいと喜んだ献立を出しても、今ひとつ食が進まない様子だから。
その分、環くんが残したら勿体ないだとか言って食べてるけど。
いつも僕たちに元気な笑顔を見せてくれていただけに、いまの元気がない愛聖さんを見るのが辛い。
早く元気になってくれるといいけど···
そう思いながら、マネージャーが入って行った愛聖さんの部屋を見つめ続ける。
そう言えばこの事を、あの人たちは知っているんだろうか?
もしかしたらあの2人なら愛聖さんを元気付けてくれるんじゃないか?とも。
今度もし見掛けたら、ひと声掛けてみようか?
そんな事を思いながら、手が止まったままのモップを握り直した。